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7月 ページ14

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「今年は暑いなあ……」


『……せやね。』


「どうしたん、元気ないな。体調でも悪いん?」


『ううん。……大丈夫や。体調はええで。』





北は麦わら帽子をかぶったAに

ペットボトルの水を渡す。





『……大丈夫や。これは信ちゃんが飲んで。
信ちゃんが体調崩したら大変やもん。』


「俺はええねん。
もう一本ペットボトル持ってきてるから大丈夫や。」


『……ありがと。』





Aは渋々ペットボトルを受け取る。

封は開けずに冷たいペットボトルを膝に置く。






「雨は少なくて中干し出来るからええんやけど。」


『……害虫病には気を付けてな。』


「実はな、農薬はあんまり使いたくないねん。
それやと……やっぱり害虫は多くなるよな?」


『……うん。でも、……無農薬って安心や。
信ちゃんならきっとええ米作れるわ。頑張ってな、』


「ありがとうな。」





そう言ってうつむくA。

北は不思議に思って顔を覗き込む。





「…………Aっ?どうしたん!?
体調悪いんか、顔色悪いで!」



『や、大丈夫や。ほんまに……大丈夫や……』






泣きそうな、そんな顔だった。

それでも必死に笑顔を作って北に笑いかける。






『やっぱ今日は暑いからやな。うん。そうや。』


「もう家に帰り。歩けるか?」


『うん。歩けるよ。心配かけてごめんな。
……もう、大丈夫やからね。』


「……?元気になったらまた来てや。」


『うん……
もう、信ちゃんの"邪魔"はせんから。』






ふらりと立ち上がったAは

静かに北に背中を向ける。







さよなら(・・・・)、信ちゃん。』








声が震えていた。








.









.









北がAに渡したペットボトルは

すっかり汗をかいて祠の横に転がっていた。

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沙羅(プロフ) - トロピカーナブランケットツッパーナムルさん» めコメントありがとうございます!!そう言って頂けて本当に嬉しいです!!読んで頂きありがとうございました!!! (2021年7月4日 0時) (レス) id: 1f154ecd75 (このIDを非表示/違反報告)
トロピカーナブランケットツッパーナムル - いやこの作新ガチ好き (2021年7月3日 17時) (レス) id: 99e5f8b903 (このIDを非表示/違反報告)
沙羅(プロフ) - でこりんまんさん» コメントありがとうございます!来て貰えて本当に嬉しいです…!!切ない、でも幸せなお話が書きたかったのでそう言って貰えて私も感涙です……!!!読んで頂きありがとうございました!! (2020年10月26日 12時) (レス) id: 1f154ecd75 (このIDを非表示/違反報告)
でこりんまん(プロフ) - 幼なじみは個性的から飛んできました……!凄く素敵なお話でうるうるしながらよませていただきました……!! (2020年10月26日 8時) (レス) id: 5f3c679f42 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:沙羅 | 作成日時:2020年10月25日 19時

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