６月・続続々 ページ11
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「中田さーん！」
北は走っていた。
濁った川の水は底が見えなくて恐ろしい。
『信ちゃん。』
「A！？１人で何してんねん！危ないで！」
『大丈夫や。すぐ家に帰る。
それよりな、うちの家そこそこ高台なんやけど
下流の河川敷に人みたいなのが倒れてん。
流木かも知れんけど……
何かあったら怖いわ、見て来たってや。』
「ほんまか！すぐ見てくる！
Aははよ家に帰るんやで！」
『おん。信ちゃんも気を付けてな。』
Aは手を振って北を見送る。
それから山のお社に向かって歩き出した。
石段を登れば境内では
宮司は葉っぱをかき集めながら
お社に向かって話しかけていた。
「凄い雨でございましたなあ……
梅雨とはいえこんなに降ったんは何時ぶりやろか。」
『せやなあ。宮司さんは産まれてないんやない？』
『土地神』はそんな様子を眺めながら
ほうきを持つ宮司に話しかける。
「先程よくお参りに来られる中田さんが
川に流されてしまった、と聞きました。
無事やとええんですが……」
『今は医学っちゅうもんが発達してるらしいし、
きっと大丈夫や。
それに信ちゃんがすぐ見に行ってくれたしな。』
『土地神』はお社の階段付近に座ると
自分の治める土地の水が早く引くように祈った。
「おや……誰か来ましたな。」
「宮司さん、こんにちは。」
『信ちゃん！！』
長い石段を登ってきたのは北だった。
『土地神』は嬉しそうに立ち上がるが
姿を消しているので誰にも見えていない。
「ご参拝ですか？」
「それもなんですけど……
こちらに小さい女の子は来とりませんか？」
「小さい女の子……？」
宮司は首を傾げる。
「中田さんを探してる途中で会ったんですけど
川下に向かう時ここの階段を上ってた気がして…」
「はあ……自分はここで掃除しとりましたけど
女の子は登って来ませんでしたなあ。」
「そうですか。分かりました。」
北は宮司に一礼をしてお参りするべく社に向かう。
『土地神』は一足先に階段を下りて行った。
「ツチノカミ様は元々、女の子やったんですよ。」
「！」
「昔話にようある生贄から生まれた神様なんです。
でも、とても人間が好きやと伝わってます。」
「……優しい、神様なんですね。」
北も宮司も、優しく微笑んだ。
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沙羅(プロフ) - トロピカーナブランケットツッパーナムルさん» めコメントありがとうございます！！そう言って頂けて本当に嬉しいです！！読んで頂きありがとうございました！！！ (2021年7月4日 0時) (
レス) id: 1f154ecd75 (このIDを非表示/違反報告)
トロピカーナブランケットツッパーナムル - いやこの作新ガチ好き (2021年7月3日 17時) (レス) id: 99e5f8b903 (このIDを非表示/違反報告)
沙羅(プロフ) - でこりんまんさん» コメントありがとうございます！来て貰えて本当に嬉しいです…！！切ない、でも幸せなお話が書きたかったのでそう言って貰えて私も感涙です……！！！読んで頂きありがとうございました！！ (2020年10月26日 12時) (レス) id: 1f154ecd75 (このIDを非表示/違反報告)
でこりんまん(プロフ) - 幼なじみは個性的から飛んできました……！凄く素敵なお話でうるうるしながらよませていただきました……！！ (2020年10月26日 8時) (レス) id: 5f3c679f42 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：沙羅
| 作成日時：2020年10月25日 19時
