6月・続 ページ9
北信介side
ザンザンと降る雨の音が響く。
「Aの言う通りやったなあ……」
「Aて例の田圃に居た子?」
「せや。この雨予想しててん。凄い子や……」
ばあちゃんにもAのことは話してあった。
いつか会わせたろ。
「……にしてもえらい降るなあ。」
「ほんまに川が氾濫してまうかもしれんな。」
風も吹いているのか凄い音や。
稲も、祠も大丈夫やろか。
そんな不安を抱きながら布団にもぐった。
──────
翌朝。
まだ少し雨は降っとった。
「信介君!」
「中田さん、雨やのにどうしたんです?」
「こんなん雨のうちに入らんわ。
田圃、見に行かんの?初稲作やろ?」
「そうですけど……」
わざわざ傘をさして中田さんが訪ねてきた。
中田さんはもう農家歴は長いベテランや。
このくらいなら平気なんやろな。
「稲が倒れとったら大変やで。」
確かに。どないしよ。
"約束"やで。
行こうか、そう思ったとき
ふとAの言葉が脳裏をよぎる。
せや、約束したんや。
雨が降ってたら家を出んて言うたんや。
約束は守らなあかんわ。
「……すみません、中田さん。
俺は雨が止むまでは家に居りますわ。」
「そうか?まあ……信介君がええなら……」
俺は行くわ、と中田さんは
まだ降る雨の中歩いていった。
それから数時間経って雨が止むと同時に
家に中田さんの奥さんが駆け込んで来た。
「うちの人が!!か、川に流されてしもた!!
探すの手伝って下さい!!
すみません!ほんまにすみません!!」
「そらあかんわ、すぐ行きます!
奥さんは消防に連絡して下さい!」
慌てて靴に履き替え外に飛び出す。
中田さんの田圃は川の近くやったな。
雨で濡れた道路は滑る。
稲が氾濫した川の水に沈んでる所もあった。
自分の田圃も心配やけど今はそれどころやない。
中田さんをはよ見つけてやらな。
.
『……ほらな?どうにも出来んねん。』
.
冷たい、Aの声が聞こえた気がした。
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沙羅(プロフ) - トロピカーナブランケットツッパーナムルさん» めコメントありがとうございます!!そう言って頂けて本当に嬉しいです!!読んで頂きありがとうございました!!! (2021年7月4日 0時) (レス) id: 1f154ecd75 (このIDを非表示/違反報告)
トロピカーナブランケットツッパーナムル - いやこの作新ガチ好き (2021年7月3日 17時) (レス) id: 99e5f8b903 (このIDを非表示/違反報告)
沙羅(プロフ) - でこりんまんさん» コメントありがとうございます!来て貰えて本当に嬉しいです…!!切ない、でも幸せなお話が書きたかったのでそう言って貰えて私も感涙です……!!!読んで頂きありがとうございました!! (2020年10月26日 12時) (レス) id: 1f154ecd75 (このIDを非表示/違反報告)
でこりんまん(プロフ) - 幼なじみは個性的から飛んできました……!凄く素敵なお話でうるうるしながらよませていただきました……!! (2020年10月26日 8時) (レス) id: 5f3c679f42 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:沙羅 | 作成日時:2020年10月25日 19時