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さんじゅうさん ページ34

no side



福沢「ふざけるな!!」

乱歩の顔を強烈な平手が打った。



破裂するような甲高い音が響く。眼鏡が吹き飛んだ。



福沢「何が計算通りだ!何が間に合っただ!
俺が飛び込んだ時、
お前の目の前にあったものは何だ?
銃口だろうが!」



乱歩は衝撃で半回転したまま固まっている。

打たれた頬に真っ赤な跡が浮き上がっている。



乱歩「────あ」

福沢「この世に絶対などない!
俺が気づくのが一秒でも遅れたら、
この場所へ辿り着くのが一秒でも遅れていたら!
お前は撃ち殺されていたかも知れぬのだぞ!」



乱歩は頬を押さえて呆然としている。



乱歩「だ─だってそれは、絶対に─来てくれると」

福沢「違う、
お前は自分の力を証明したかっただけだ!」



福沢の怒声が大音声で乱歩に降り注いだ。

あまりの音量に部屋の硝子が震える。



福沢「力を誇示するのは構わん、
頭脳で敵に挑むのもいい!だがその勝負の賭け金に
自分の命を乗せるのだけは止めろ!
お前はまだ────」



福沢には判らない。



何故自分がこんなにも怒鳴っているのか。

何故自分がこんなにも必死になっているのか。

何故────。



福沢「お前はまだ────子供なのだぞ!」



福沢の胸が傷んだ。

ほとんど物理的なまでの痛みに、福沢は顔を顰めた。



何故この子を一人にしてしまったのだ。

何故共に行動してやれなかったのだ。


乱歩はこんなにも──幼く、弱い人間なのに──。



乱歩「う────あ、う────」



打たれた頬を真っ赤に腫らした乱歩の顔が、

くしゃっと歪んだ。



見開かれた大きな目が揺れ、みるみる涙が宿る。





途端に後悔が福沢の胸を焼いた。

やりすぎだ。


乱歩が叱られ慣れているとは思えない。

ましてやこれほど大音声で怒鳴られ

平手まで食らっては────。




乱歩「だって、だって────」

乱歩はうつむいて震えた。



床の上にぼたぼたと大粒の涙が落ちる。



福沢は息を吐いた。

言葉にならない思いを胸が去来する。



乱歩。

両親を失い、誰にも理解されず

凍える孤独を歩んできた天才少年。

守るものもなく広大な世界に放り出された子供。



この少年の魂をどうすればいいのか、

どう接するべきなのか。



福沢は判らなかったから、頭をぽんぽんと、

軽く二回撫でてやった。



乱歩は福沢の胴体にしがみついた。



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沙羅(プロフ) - ミズミズさん» コメントありがとうございます!本当にありがとうございます...これも皆様のおかげです!相変わらず更新はゆっくりですが今後ともよろしくお願い致します! (2019年3月9日 12時) (レス) id: 1f154ecd75 (このIDを非表示/違反報告)
ミズミズ(プロフ) - 続編おめでとうございます!いつも楽しみに更新待ってます。頑張ってください! (2019年3月9日 11時) (レス) id: ce434b4809 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:沙羅 | 作成日時:2019年3月9日 8時

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