拾壱 ページ12
夏目side
夏目「……」
的場「彼女、元気でしょう」
夏目「そうですね…」
無言を破ったのは的場さんだった。
的場「体が弱いのに強がるんです。
私も心配で心配で…先日は本当に助かりました」
珍しく的場さんが素直な気がした。
それに表情は穏やか。
Aさんは愛されてるんだって分かる。
夏目「例え祓い屋でも…人助けは当然ですから」
的場「……ふふ、夏目君は良い人ですね」
夏目「……どうも」
貴女『お待たせ貴志君』
スルリと襖を開けてAさんが顔を覗かせる。
片手にはお盆。
貴女『緑茶でも大丈夫かしら?』
夏目「えっと…大丈夫、です」
正直まだ不安だけど。
何か入っていたら、怖い。
貴女『…!』
首を傾げていたAさんが
何か閃いた顔をして湯呑みを掴む。
夏目「え、ちょ、」
止める間も無くAさんは中のお茶を飲む。
貴女『ぷはぁ……毒味完了!』
的場「随分と大胆な毒味ですね」
夏目「えぇ…」
にっこりいい笑顔で湯呑みを渡される。
貴女『命の恩人に毒は盛らないわ』
夏目「す、すいません…」
貴女『いいのいいの!
普段の静司さんの行いが悪いからよね』
的場「」←
あ、的場さんが固まった。
しかも笑顔。
貴女『さぁ、くつろいで行ってね』
Aさんは心底嬉しそうに笑って言う。
それから あ、と声を上げると
的場さんの肩をつついた。
的場「ああ、そうでした。
七辻屋の饅頭です。買うとこ見てましたよね」
的場さんが横に置いていた紙袋を俺に渡す。
確かに七辻屋で買っていた。
何でかと思ったけどこういう事か。
夏目「あ、ありがとうございます…」
まぁ店で買った物だし……大丈夫か。
そう思い紙袋を受け取る。
貴女『ふふ、貴志君は素敵な子ね』
夏目「え?」
突然そう言われて間の抜けた声が出る。
貴女『貴志君と知り合えて私とっても嬉しいの』
夏目「は、はあ……」
的場「Aは的場一門という事もあり
同年代の知り合いが少ないですからね」
貴女『ふふ、周一さんくらいかしら』
周一さんって…名取さんのことか?
え、でも名取さんはAさんより歳上じゃ……
貴女『3つ違いなのよ』
夏目「えぇ!てことはAさんは二十歳…」
貴女『あら、歳上に見えた?』
夏目「まさか!その、未成年かと…すみません」
そう言うとAさんは
手を口にあてて目を見開いた。
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作者名:沙羅 | 作成日時:2018年12月15日 20時