愛すは祓い屋の男【夏目友人帳】 (ページ16)

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拾伍ページ16

no side

ﾆｬﾝｺ「手の内は明かしたくないんだがな」

いつもの招き猫姿から

本来の姿……斑へと変幻しそう呟く。

夏目「火神、この置物に頑張って移ってくれ」

火神「承知シタ」

斑が力を込め

額の名を示す部分から強烈な光を放つ。

斑「世話の焼ける……！」

火神「ｯ……！！」

ズルリ、とAの体から出てきた火神は

フラフラと揺らめきながら置物へ近付く。

夏目「頑張れ火神！」

的場「A……！」

火神が置物に入ると同時に

的場は倒れるAを受け止める。

斑「これで心置き無く祓えるな？火神よ」

火神「すまぬな……手間をかけさせた」

夏目「なあ火神……」

夏目はそっと口を開く。

置物が小さく揺れて夏目を見る。

夏目「どうしても…祓わなきゃ駄目なのか？
依代があるんだから……祓わなくても、」

火神「そう長くは持つまい……。
我が云うのも可笑しな話だが我の力は強大でな。
この様な置物は数日もすれば砕けるだろう」

夏目「！」

火神「よく……十何年も我を宿して
生きられたものよ。……すまぬな、A」

カタカタと小刻みに震える置物。

声色には悲しみが混ざっていた。

的場「A、大丈夫ですか、」

貴女『……ありがとう静司さん。大丈夫よ』

いつの間にか立ち上がったAが

そっと置物の前に跪く。

火神「A……」

貴女『火神様、お話は聞いておりました。
……私は構いませんよ』

火神「！」

貴女『元はと言えば私のわがままなのです。
お社を守るため私は身を差し出したのです。
覚悟はしておりました。この火傷も承知の上……』

そう言ってAは左の手のひらを見せる。

そこには酷い火傷の痕があった。

貴女『お社を守り、父を見捨て、私は助かった。
私は静司さんと出会い幸せに暮らしております。
これ以上、何を望みましょうか。

私は十分に生活してゆけます。
ここで火神様を祓うなど罰当たりでしょう。
私の身など気になさらないで下さい』

火神「しかし……」

Aは真剣な瞳で置物を見る。

置物は決まりが悪そうに言葉を詰まらせた。

的場「A、貴女は体が弱いんですよ。
これ以上無茶したら──────」

貴女『大丈夫ですよ静司さん。
それに今度は、私が火神様を救う番なんです』

的場「A……」

珍しく困った様に眉を下げる的場。

しばらくその時間が続いた。