１話 ページ5
no side
「んじゃあ１０分休憩ー」
黒尾の掛け声に返事をして
コートの外へ出る音駒高校の選手たち。
『ドリンクとタオルどうぞ。』
「あざッス！A先輩！」
「ありがとう。」
Aは手際よくボトルとタオルを配っていく。
『ほら、研磨も。』
「ありがと……」
「俺は？」
ニョキ、と顔を覗かせる黒尾鉄朗。
Aは真顔だ。
『あそこに置いてあるけど？』
「手渡してくれないの？」
『して欲しいの？』
「うん。」
『何で？』
「逆に何で？？」
ニヤニヤと笑う黒尾。
Aはキュッと眉を寄せてボトルを手に取る。
『はいドーゾ。黒尾センパイ。』
「サーンキュ。マネージャーさん。」
黒尾は満足そうにボトルを受け取り去っていく。
「相変わらず変な関係だね。」
『夜久先輩。あ、タオルどうぞ。』
「ありがと。
いつも思うけどあのやり取り何？」
『……さァ？私もよく分かんないです☆』
「え。」
『テツがあーやって、あ、黒尾センパイが
変な絡みしてくるんですよ助けて下さい夜久先輩。』
「おい言い直すなよA。てか助けてって何だ。」
『今、夜久先輩と話してる！！』
「あぁ？」
「落ち着けって２人とも……」
夜久が間に入ってなだめる。
Aは夜久の背中側に回って黒尾を見る。
『……部活中は一応さ、
黒尾センパイって言った方が良いでしょ。』
「……」
『……センパイが嫌ならやめるけど。』
「それ去年も言ってたよね。」
Aはそれだけ言って
そそくさとその場を離れていく。
「……黒尾？」
顔を覆って黙る黒尾に夜久が声をかける。
「……うちのマネージャー可愛い。」
「幼馴染自慢。」
「クロきもい。」
「うるせぇ。」
おら休憩終わりだ、と声を張り上げる黒尾。
皆がコートに戻った瞬間Aは
置かれたタオルを回収し新品と交換、
補充のドリンクを作りにボトルを回収。
全て素早く無駄のない動きで行っていく。
音駒では腕を酷使できないAを気遣って
ボトルカゴを運ぶためのカートを購入した為、
作業はスムーズだ。
『呼び方なんて何でもいーじゃん？
いたずらっ子のように笑ったAは
鼻歌交じりに体育館から出て行った。
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作者名：沙羅
| 作成日時：2020年3月25日 22時
