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no side




1月3日、午前1時30分。
閑静な住宅街の一角に黒塗りの車が停る。
車から降りた女はある方向をじっと見つめた。




カツン、と静かな住宅街に足音が反響する。
歩き始めた女は、暗闇の中に静かに立つ人影を見つけ
歩く速度をほんの少し落とす。




開けた土地を眺めるように立っていた人物が
足音に気付いたのか、ゆっくりと振り返った。




『…………やっと会えた、お姉さん。』




それはよれたパーカーにサンダル姿の
駿東で間違いなかった。

そして「お姉さん」と呼ばれた女は、
ゆっくりと街灯の下へ姿を現した。




「私が来るって分かっていたのかしら?」




女は「黒の組織」が1人、ベルモットだった。
プラチナブロンドの髪を揺らして駿東を見据える。




『ええ。全部、ぜんぶ思い出したの。
私が、独りになった理由も、何もかも。』


「……」


『だから、きっとお姉さんが来ると思って。
……今度こそちゃんと私も殺してちょうだい。』


「!」




最後の言葉にベルモットが驚いたように目を見開く。
それから怒っているのか、少し低い声で話し始めた。




「……Kitty、本気で言っているの?」


『……私が冗談で言うと思っているの?
実の両親にすら愛されず軟禁され続けた5年間。
そして両親が急にいなくなって、記憶も無くなった。

違和感を抱えたまま何となく勉強して進学した。
そしてついに思い出したのよ。
憎い憎い両親はお姉さん達に殺されていた。』




駿東は虚ろな目で言葉を紡ぐ。




『……思い出すまでが長過ぎたのよ。
憎いと思い続けたこの気持ちは二度と変わらない。
私はどうすれば良いのか分からないの。

……勘違いしないでね。
私はお姉さん達に感謝こそすれ、恨んでないのよ。

だから、もういいの。
もう疲れたのよ。……もう何も考えたくない。』




駿東は虚ろな目のまま微笑んだ。
全てを諦めた者の、儚い笑顔だった。




「……あぁ……Kitty、悲しい事を言わないで。
貴女は独りになった後も愛されたじゃない。
その証拠に苗字も何度も変わっている。」


『……?アレは偽物の家族でしょう?
皆、自分と自分の子どもが大切なのよ。
だから皆、私の前からいなくなっちゃった。
……今の私に残っているのは"潘"という苗字だけ。』


「……Kitty、聞いてちょうだい。
貴女はちゃんと両親に──────」


『お姉さん、』




駿東はベルモットの言葉を静かに制した。

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かるぴん(プロフ) - 沙羅さんお元気そうでよかったです!丁寧なお返事ありがとうございます!更新される日をたのしみにしています!お体に気をつけてお過ごしください〜!! (7月4日 22時) (レス) @page22 id: e2b715c702 (このIDを非表示/違反報告)
沙羅(プロフ) - かるぴんさん» コメントありがとうございます!そう言って頂けて、書いていて良かったと思えますありがとうございます!!また更新していくので、どうぞよろしくお願いいたします!! (7月4日 12時) (レス) id: fccd246cdb (このIDを非表示/違反報告)
沙羅(プロフ) - ウルさん» コメントありがとうございます!隙間隙間に下書きを書きつつあるのでもう少しお待ちくださいませ!応援ありがとうございます!! (7月4日 12時) (レス) @page22 id: fccd246cdb (このIDを非表示/違反報告)
かるぴん(プロフ) - あまりの面白さに読む手が止まりませんでした!続きを読める日を心待ちにしてます!! (7月4日 8時) (レス) @page22 id: e2b715c702 (このIDを非表示/違反報告)
ウル - 更新待ってます、頑張ってください!応援してます! (2023年5月3日 8時) (レス) @page21 id: ec66583caa (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:沙羅 | 作成日時:2022年5月7日 10時

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