花香る場所で訪れるもの (ページ20)

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「大した理由じゃないんですけど、」

正直に話して
夢とか、そういうのに無縁の人間だって知られて

つまんないな、とか思われたらどうしよう

そんなこと思うような人じゃないと分かっていても

仕事に誇りを持っている宮近さんは今の私にはあまりにも眩しい

ぎゅっと洋服の裾を掴んでいると、

雑誌を閉じて、宮近さんが身体ごとこちらを向いた

「うん、」

「今まで結構適当に生きてきて、
就職を機に変わりたいなー…なんて思ったりして」

「なるほどね、素敵だと思う！
資格取るために頑張ることで何か見えるものあると
思うしね、俺は応援する」

「だといいんですけど。
ほんとに私、何もないので。空っぽなんです」

やりたいこともないし考えたこともない

そんな自分が嫌だったのも事実だ

だからいま、

素敵だと言われて認められた気がした

「空っぽなのは間違いだよ。
この間、助けてくれたじゃん！お花！」

「え？あれはたまたま好きなだけで」

「好きなことあるじゃん！あれで幸せにできることもあると思うよ、空っぽなんかじゃない」

ぽん、と頭に手を置き、
宮近さんが恥ずかしそうに笑った

「…こんなこと言う柄じゃないから恥ずかしいわ」

「ふふ、ありがとうございます」

好きになっちゃダメなのに

恥ずかしそうに笑う
あなたの隣にいたいと思ってしまう

最初から感じていた居心地の良さの正体に

気付きたくなかった事実に

気付いてしまったみたいだ