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「Aちゃん！」
「みや…おつかれさまです」
名前を呼びかけて途中で口をつむぐ
「何してたの？」
帽子を被り直しながら宮近さんが隣に座る時に
ふわりと香る香水が甘く鼻をくすぐった
「宅建の勉強、してました」
「そうなんだ、おつかれさま」
そう言った宮近さんの手から
大量のカルチャー誌がテーブルに並ぶ
「これは？」
「舞台やるからさ、改めてダンスとか
色々知りたいなと思って、とりあえず持ってきた」
改めて読んだことない雑誌がたくさんあって思わず
一緒に覗き込む
「このダンス、俺ジャンル的にちょっと苦手」
「へえ
ジャンルでやっぱりそういうのあるんですね」
「そうそう、リズムの取り方が…、」
パッと顔を上げた瞬間目が合い
思ったより距離が近くてすぐにお互い離れる
「ごめん、近かったね」
「あ、いえ…あはは」
気まずい空気を断ち切るように
宮近さんが私のテキストに触れる
「これ、如恵留…メンバーも同じの取ってて。
一緒だ〜と思って最初見てたんだよね」
「そうだったんですね。なんでこの資格のこと
知ってるんだろって最初から思ってました」
初めてここで会った日から
もうすぐ1ヶ月が経とうとしている
ここまで早かったな、とテキストを見つめながら
思い返していると宮近さんが口を開いた
「ね、なんでこれ勉強してるの？」
「え？あー…」
言葉を探そうとして黙る私に
何か察したのか、困ったような顔で宮近さんが言った
「話したくなかったら全然、大丈夫だよ
なんでだろ？も思って聞いただけだから」
そう言ってまた雑誌に目を戻す横顔を見つめると
視線に気付いた宮近さんとまた目が合った
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作者名：ぷらむ
| 作成日時：2021年3月15日 23時
