夢の中の君は。【3】 (ページ10)

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中村side

「…なんで俺？元太が渡せば良くない？」

やっと口を開いたかと思うと、

苦しそうな顔をして海斗がそう言った

「え、だって海斗会ってないの？」

なんでそんな苦しそうな顔をするのか、

俺に気を遣ってか分からずつい責めた口調になる

「……会ってないよ
2人が別れる直前に連絡先も消した。俺のせいで
別れたのかなって思ったから尚更会えるわけない」

別れる前の日、地元で
何があったかはいまだに知らないし

そもそも海斗と何かあったのかすら分からないけど

間違いなく、
あの時Aの気持ちは海斗に向いていて

でも、
俺のことを大切にしてくれようとしていたのは事実で

俺の存在がAを葛藤させて苦しませるくらいなら

そう思って別れを選んだのに。

「……まじかよ」

天を仰ぐようにぽつりとつぶやくと、
元太が隣で口を開く

「余計なお世話かもしれないけど、Aちゃんに
自分の気持ちに素直になってほしいって俺言った
2人が、海人たちが報われてほしいって」

「…でも俺、Aちゃんの連絡先消したから」

…なんて海斗は言うけど、
多分俺への気持ちもあるんだろなと心の中で察する

「分かった、俺がこれは渡すよ。
そんでAとちゃんと話す。
だから海斗も気持ちに素直になって
…最後くらいカッコつけさせてよ、＂海斗くん＂」

カイトくんなんて忘れさせてやるって言ったのに

俺はやっぱり勝てなかった

いや違う、無理矢理にでも忘れさせる方法はあった

だけど、できなかったから
せめて最後くらい協力させてほしい

じっと海斗を見つめると、
俺の気持ちを汲み取ったのか

「…分かった、ありがとう海人」

海斗が力無く微笑みながら頷いた