＊ ページ20
テーブルの上にあった昨日和くんから貰った絵は
倒れた衝撃で少し破れてしまっていた……
『ハルさん…』
手を握ってぬくもりを確かめてやっと、ふぅ…と息を吐き出せた。
だって、こんなにもグッタリとする姿が、どうしも恩師の最期と重なってしまうから
グッと奥歯を噛んで
涙がこぼれないように…もう一度深呼吸をした。
.
テープで破れてしまった絵の端っこをつなぎ合わせた。
それをテレビ台に貼り付けると
2つの写真立てが目に入って、また涙が溢れそうになる…
一つは、ハルと先生が二人で病室で笑ってる写真。
少し先生はやつれてしまっているけど、いい笑顔してるんだ。
お花見に行きたいってわがままを言った和也に、ハルが桜の蕾がついてる木をどこから折って持ってきて、先生に『ダメじゃないのそれ？笑』って突っ込まれたときのもの。
普段はしっかりしている人なんだけど、たまに少しクレイジーなのがハルさんで
桜の木を持ってたときは、『でもこれで病室でも花見できるでしょ？』って笑ってた。
この写真を撮ったのも翔で、
2人の関係が羨ましい、と思うと同時に
ずっと二人が笑えたらいいのにな。
そう思っていたのも事実で。
もう一つの写真立てには
翔も含めて、みんなで和の3回忌に撮った写真。
子供の成長ってすごくて
和也はこの頃よりも少し今のほうが大きいし、目は父親に似てきたんだ。
家族3人での写真は撮ることが出来なかったけど
ハルはいつでも笑っていたんだ。
そのハルが…今目の前で自分の命と向き合っている…
ふらっと病室をでると
翔は無意識にあるところへ向かっていた。
.
駅からすこし歩いたところにある丘の上。
街を一望できるそこは
翔が何かに悩むたびに、不安になるたびに、プレッシャーで潰れそうなとき
元気がもらえる気がして訪れていた
恩師のお墓だった。
『先生…』
しゃがんで、やっと花も何も持たずに来てしまったことに気づいた。
『でも…いいですよね…』
返答が返ってこないことなんて百も承知で
翔はぽつぽつと、心の声を和也に届けた。
"ハルさんを助けてほしい…"
"和くんのためにも、みんなに笑顔でいてほしい…"
"俺にできることはありませんか…"
鼻をグスングスン鳴らしながら
翔は泣いた。
『もう、大切な人が居なくなるのはっ、イヤです…』
ハルの笑顔も
和也の笑顔も
潤の笑顔も
ぜんぶ…助けてあげてください…
空を見上げれば、そこにあの人がいると信じて…
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 695人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
nkrysu(プロフ) - いつも楽しく小説の方見させていただいています。�，鬟螢�エストしたいと思います。こちらの小説に出てくる嵐さんの関係性が好きで、もっと読みたいなと個人的に思いました＾＾ (2020年8月2日 1時) (
レス) id: 42b1441c9f (このIDを非表示/違反報告)
ぽんきち(プロフ) - いつもお話読ませていただいています。�△鬟螢�エストさせていただきます！個人的には、にのあい推しなのでにのあいが双子だったら嬉しいななんて考えています！ (2020年8月1日 16時) (レス) id: 60a8b99502 (このIDを非表示/違反報告)
nana kun0124(プロフ) - いつも、楽しく拝見させていただいております。どちらも読みたいのですが、ren様の書く家族パロが読んでみたいため、�△鬟螢�エストさせていただきます！ (2020年7月31日 23時) (レス) id: 05fd006556 (このIDを非表示/違反報告)
ゆりんき(プロフ) - いつも楽しく読ませていただいてます。renさんのお話どれも大好きです！どちらになっても楽しみですが、新作も気になるので�△魎�望します！更新楽しみにしてます！ (2020年7月31日 23時) (レス) id: 2a6f36912d (このIDを非表示/違反報告)
てい(プロフ) - いつも楽しく読ませて頂いています！�，�読みたいです。私がrenさんを知ったきっかけのお話で大好きなお話です！楽しみにしています。 (2020年7月15日 9時) (レス) id: 4a096847c8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ren
作成日時：2019年7月15日 20時
