【HQ】ずっと、きみだけをあいしてる。

21話 ページ31

「…………太った？」



『今夜幽体離脱して貴様の夢枕にたってやるよ』



「すみませんでした」



なんで失礼なやつなんだ。賢治くんじゃなかったら冗談では済ませず死ぬ気で幽体離脱して有言実行してやったわ。
そして耳元で数学の教科書とか読んでやりたい。


苦しんでいる賢治くんを想像してにやついていると、なににやついてんの、きもいよって言われた。


「あーそのまあ、うん。久しぶりだね。元気そうでなにより」


ちょっと照れくさそうに頬をぽりぽりとかいて、少し早口でわたしにそういった。



その様子がメールの雰囲気と全然違って、面白くて自然と笑みがこぼれた。



「…ちょっと、なんで笑ってるのか知んないけどなんか喋ってよ。……声、聞きたいんだけど」



『えっ』



こ、こえ？
こんなホストみたいなこと言う人だったんだ。


「え じゃなくて。…ほんとは声だけじゃなくて顔も見たかったし、会いたかったんだよ」



………！？


か、かおがあつい！なんだこいつ！照れる
だろ！やめろ！
突然遠距離恋愛してる彼氏みたいなセリフいうからわたしの脳と心臓は大パニックだ。


なにも言えずに口をぱくぱくしてると、



「なにその顔。真っ赤にしちゃって可愛いね」


と口角を上げた。そして
口ぱくぱくしてるのは金魚みたいだけどね。と付け足す。いやうるせえわ。


『い、いつからそんな甘いセリフを吐くようになったんだ！だれかに取り憑かれてるのか！？悪霊退散！悪霊退散！』


メールではあんなボロカス言ってくるのに！
わたしは道端で必死に南無阿弥陀仏を唱えている。



「と、とりあえずどっか寄らない？」



引き気味に聞いてくる。さっき貴様わたしのこと可愛いって言ったよな？おい。
返事は、まあ。



『寄る……』



決まってるけど。

22話→←20話

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す