Moment by Moment

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手にしたスマートフォンを食い入るように見つめる乗客たち。
かくいうわたしも、ニュースサイトを見ているのだが。
接客業をしているので時事ニュースは一通りチェックするようにしている。
残念ながら、画面に表示されるのは気分が良くなるような記事ばかりではない。
芸能人の不倫、政治家の不祥事、海外で起きている戦争。
朝から胃が重たくなるような文字の羅列を目の当たりにしたわたしは、スマートフォンの画面をロックしかばんの中にしまいこんだ。

窓の外の景色をぼうっと眺める。
移ろう風景はいつも通り、代わり映えしない。
コーヒーショップで何を注文しようか。
天気も良いしひと駅前で降りてゆっくりウォーキングするのもありかもしれない。
目を閉じて電車に揺られていると、ふと視線を感じた。

前方の座席に座る金髪の青年がこちらを見ている。
そちらを向けば、彼は気まずそうに手元のタブレットへと視線を移した。


「？！」


突然鳴り響く警告音。
車内のあちこちから聞こえてくるそれは、緊急地震速報のようだ。
かばんの中から慌ててスマートフォンを取り出す。


「地震？」


慌てふためく乗客たち。
ガタ、と強い振動がやってくる。
よろけたわたしは隣に立っていた例の男性に接触してしまった。
咄嗟に腰を支えてくれた彼も、周囲の乗客と同じように困惑した表情を浮かべている。


「ご、ごめんなさい！」


揺れはどんどんと激しくなる。
これはただ事ではない。
緊急停車するほどの地震なのかもしれないと、吊革を握り直した。
天井からジリジリと大きな音が聞こえる。

ガタン！

車両が浮き上がるほどの激しい振動。
乗客はみな、同じ方向に倒れ込む。

薄れゆく意識の中、わたしは何故かまた、今朝の夢を思い出していた。

ああ、死にたくないな.....
まだ生きていたい.....

大勢の乗客を乗せた電車は、現世から忽然と姿を消した。



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