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水を汲み電車に戻ったわたしたちは、崖の上で見た光景を乗客たちに説明した。
にわかには信じがたい現実を突きつけられ困惑する面々になんと声をかけたらいいのか。
大丈夫ですよなんて無責任なことは言えなかった。
家族がいるところへ帰ると言い残し電車から飛び出した寺崎さん、そして泣き崩れる佐藤さん。
まだ高校生の彼女の家族に会いたいと願う声に心臓がぎゅっと締め付けられる。
ドアにすがって座り込む玲奈ちゃん。
母親に語りかけるように動画を撮影する立花さん。
全てが悲劇的で、どうしようもできなくて。
何も言えないわたしは、静かに揺れる森の木々を眺めることしかできなかった。
「あ.....充電切れそう.....」
バッグからスマートフォンを取り出し画面を確認する。
救助が呼べる状況になった時の為低電力モードにしておいたものの、遂に充電が残り5％を切った。
左腕につけていたスマートウォッチも同様に。
乗客たちは各々大切な人に向けてメッセージを残している。
わたしも家族へ何かを伝えた方がよいのだろうか。
だが思い浮かんでくる言葉は、縁起でもないがそれこそ遺言のようなことばかりで。
まだ諦めたくないと、心の奥で抵抗する自分がいる。
「あの、これ.....」
畑野さんが、わたしのすぐ横でぼうっと空を見ていた萱島さんに可愛らしい花を差し出している。
どうやらそれは、昨日萱島さんが話していた“命日だった恋人”への手向けの花らしい。
萱島さんの口ぶりからわたしはその話が冗談だとすぐにわかったのだが、彼女は素直に信じていたようだ。
彼女は本当に純粋で素敵な女性だ。
とうの昔に置いてきてしまった自分自身の純心を思うと、少し泣けてくる。
わたしにも彼女のような優しさがあれば、思いやりがあれば、きっとあの時。
考えても仕方ないのに過去のことを思い出してしまう。
息苦しさを感じ、わたしは茂みの奥に腰を下ろした。
メイクポーチの中から急いで薬のシートを取り出す。
「あのさ.....平気？」
必死に息を整えていたわたしに、萱島さんが声をかけてくれた。
いつもよりも随分と柔らかい声音で、優しい表情で。
「.....大丈夫ですよ。ちょっと疲れただけですから。」
「や、大丈夫じゃなさそうだけど。」
震える手で取り出した錠剤がぽろりと地面に落ちる。
ダメ、情けない顔をしているから見ないで。
泣きそうになってうずくまると、ふいに、背中に大きな手が添えられた。
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おこめ(プロフ) - 彩海さん» 彩海さん、今際に引き続きありがとうございます🥹色んな作品読んでくださって本当に嬉しいです！お褒めの言葉、更新のモチベーションにさせていただきますね💐続編もどうぞよろしくお願いいたします！ (5月24日 9時) (
レス) id: 9157f8724a (このIDを非表示/違反報告)
彩海(プロフ) - おこめさん！こっそり読ませてもらっていました！一話一話読み応えがあってとっても面白いです😌表現が繊細なのにすごく読みやすくて流石の文才だなあといつも感動してます！続編楽しみにしてます！頑張って下さい💘 (5月24日 8時) (レス) @page46 id: 3fb936871f (このIDを非表示/違反報告)
おこめ(プロフ) - くまさん» くまさん、またコメントくださってとても嬉しいです☺️5話ドキドキの展開でしたね.....！！まだ落ちについて明言はできませんが、これから主人公と萱島さんの関係がどんどん深まっていきますので是非楽しみにしていて下さい！ (5月22日 10時) (レス) id: 9157f8724a (このIDを非表示/違反報告)
くま - いつも素敵なお話ありがとうございます！ドラマの展開がアツすぎて！こちらのお話がどうなっていくのか楽しみです！！夢主ちゃん、萱島さんと結ばれてほしいです〜🥺 (5月21日 13時) (レス) id: 04b5add429 (このIDを非表示/違反報告)
おこめ(プロフ) - ゆんさん» ゆんさん、コメントありがとうございます！お褒めいただきとても嬉しいです☺️頑張って更新してまいりますのでこれからもよろしくお願いいたします！ (5月17日 20時) (レス) @page36 id: 9157f8724a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おこめ | 作成日時：2023年4月22日 16時
