13 ページ14
.
電車の外で電子タバコを吸うサラリーマンたちから氏名年齢職業を聞き、メモに記入する。
ふうと息をつき振り向けば、少し離れたところで岩に腰かけている萱島さんがいた。
わたしも一服しようかなと、彼の隣に座る。
「疲れちゃいましたね。」
「お、おお.....そっすね.....」
落ち着きがないように膝を揺らしていた萱島さんの動きがピタリと止まった。
手元の電子タバコと私の顔を何度も交互に見比べている。
「吸うんだ。」
「普段はあんまり吸わないですけどね。というか勤務先の百貨店が全面禁煙なので、吸えない、が正しいかな。」
「へえ。百貨店.....ね。」
煙草カプセルをデバイスに差し込み電源を入れる。
カプセルを吸えば、甘酸っぱいりんごのフレーバーが鼻腔内で香った。
「美容部員をしてるんです。今朝は出勤する途中でした。」
空を見上げゆっくり息を吐く。
こんなことが起きなかったら、今頃きっと接客をしていたんだろうな。
今日は新作のタッチアップで忙しかったに違いない。
「どうりで綺麗なわけだ。」
「あ.....ああ、ありがとうございます。気を使ってるのでそう言っていただけると嬉しいです。」
予想外の言葉に彼の方を見れば、サングラス越しの穏やかな瞳と目が合った。
至近距離で眺める萱島さんの顔はとても整っていて、世間一般でいうイケメンの部類であることは疑いようがなかった。
「萱島さんも、素敵ですよ。」
「え。」
「小物がすごくお洒落ですよね。とってもセンスがいいと思いました。」
「あー、うん、まあ。こっちも気使ってるっつーか.....ありがとうございます。」
「ふふ。いえいえ。」
照れる萱島さん。
わたしは口元がゆるむのを感じた。
失礼かもしれないが、彼の姿が大型犬のように見えてしまったからだ。
救いようのないこんな状況だが、少しだけ気が楽になった。
「ここにしましょう。」
気付けば、白浜さんが小枝を集め火を起こそうとしている。
狼煙でも上げるのだろうか。
先程の乗客名簿を共有するため、わたしは彼の元へ歩み寄った。
.
714人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
おこめ(プロフ) - 彩海さん» 彩海さん、今際に引き続きありがとうございます🥹色んな作品読んでくださって本当に嬉しいです!お褒めの言葉、更新のモチベーションにさせていただきますね💐続編もどうぞよろしくお願いいたします! (5月24日 9時) (レス) id: 9157f8724a (このIDを非表示/違反報告)
彩海(プロフ) - おこめさん!こっそり読ませてもらっていました!一話一話読み応えがあってとっても面白いです😌表現が繊細なのにすごく読みやすくて流石の文才だなあといつも感動してます!続編楽しみにしてます!頑張って下さい💘 (5月24日 8時) (レス) @page46 id: 3fb936871f (このIDを非表示/違反報告)
おこめ(プロフ) - くまさん» くまさん、またコメントくださってとても嬉しいです☺️5話ドキドキの展開でしたね.....!!まだ落ちについて明言はできませんが、これから主人公と萱島さんの関係がどんどん深まっていきますので是非楽しみにしていて下さい! (5月22日 10時) (レス) id: 9157f8724a (このIDを非表示/違反報告)
くま - いつも素敵なお話ありがとうございます!ドラマの展開がアツすぎて!こちらのお話がどうなっていくのか楽しみです!!夢主ちゃん、萱島さんと結ばれてほしいです〜🥺 (5月21日 13時) (レス) id: 04b5add429 (このIDを非表示/違反報告)
おこめ(プロフ) - ゆんさん» ゆんさん、コメントありがとうございます!お褒めいただきとても嬉しいです☺️頑張って更新してまいりますのでこれからもよろしくお願いいたします! (5月17日 20時) (レス) @page36 id: 9157f8724a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:おこめ | 作成日時:2023年4月22日 16時