熱伝導 ページ4
.
「げっ…もう誰も残ってないし…」
キリがいいところで折り合いを付けて、パソコンの電源を落とすと、廊下に飛び出した。電車…あ、これより一本早いのに乗りたい…画面をスクロールしながらエレベーターを待っていると、ジウンから『彼にドタキャンされた』とのLINEが来た。あらあら…ご愁傷様です。
「乗らないんですか？」
ピタリ、と手が止まる。この声は…
「閉めちゃいますよ」
茶髪にパーマがかかったスタイリング、綺麗な二重の目が眼鏡の奥で笑っている。
ジョンデくんだ。
いそいそと乗り込むと、ゆっくり扉が閉まった。うわ、気まずい…なんかお腹鳴りそう。あ、鳴る。絶対鳴る。いや、待て。
ぐぅううう……
「……お腹すきましたね〜」
恥ずかしそうに笑ったジョンデくん。君の笑い声に掻き消されたけど私もたった今ラスボスの登場シーンみたいな音が鳴ったよ！
「いや、だってもうこんな時間だよ！私もずっとお腹鳴っててさ〜」
「ですよね〜！何か買いに行こうと思ったんですけど…」
あ、着いた。
足並みを揃えて外に出ると、冷たい風が吹き抜けてきた。外はこれよりももっと寒いのか…そんなことを考えても仕方ないけど。
「あの、ジョンデくん」
「なんですか？」
「お昼の時…ごめん、あの実は聞こえてて…」
「あー…ですよね」
「ごめんね…なんか嘘吐かせたでしょ。私、ほんと全然気にしてないから…はは、ジョンデくんぐらいの子からしたら、確かにおばさんかも、だし」
本当は凄い傷ついたけど。
でもまぁ、確かにそのぐらいの歳の子から見たら私なんておばさんで、イケてなくて、行き遅れって感じに思われてもおかしくないのかもしれない。
「……それ、やめてください」
言葉を返す間も無く指をするりと絡め取られた。……って、え？手、
「そうやって線引かれると、どんどん遠くなる…俺にとったら、AさんがAさんであることが大事で、歳なんてどうだっていいんですよ」
ジョンデくんの少しカサついた指が撫でるように動くから、変な気分になる。目が合うと、凄くとろんとした目をしていて、熱が指先から伝線するようだ。
これ以上は、ダメだ。
本能が警音を鳴らしている。
逃げないと…なのに、足が縫い付けられたように動かない。
柔らかい熱が、唇の少し横に触れた。
弾むような口先に、振動だけが伝わった。
「ね、もっと俺のこと意識してよAさん」
ああ厄介だ。彼は捕食者のような目をしてる。
逃げられない。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 755人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「EXO」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
さえ(プロフ) - カエルさんの言葉選びとか文章体がすごく好きです。引き込まれます。 (2017年6月3日 6時) (
レス) id: 463e3f37d7 (このIDを非表示/違反報告)
pumpkin(プロフ) - 毎日更新楽しみにしてました！綺麗事じゃ無いロマンチックな世界観がすごく好きでした！また期待してます！！！素敵な作品ありがとうございました！ (2017年4月3日 15時) (レス) id: 8f6e7b779b (このIDを非表示/違反報告)
ひなた(プロフ) - ツイッターもフォローしてます！カエルさんのツイッターでの欲望丸出し！な文章も大好きですが、しっかり練りこまれた占ツクでのお話も大好きです！カエルさんの書くジョンデがとてもかわいくて大好きです！また占ツクでもジョンデ連載ぜひしてください(*^^*) (2017年4月3日 2時) (レス) id: fd832b5a03 (このIDを非表示/違反報告)
カエル(プロフ) - つかるんさん» ありがとうございます〜！！（ ; ; ）そのお言葉を励みに更新ドシドシ頑張らせていただきます！！（ ; ; ） (2017年3月27日 9時) (レス) id: d32f1fae21 (このIDを非表示/違反報告)
カエル(プロフ) - pumpkinさん» ありがとうございます（ ; ; ）勿体無いお言葉でございます…！（ ; ; ） (2017年3月27日 9時) (レス) id: d32f1fae21 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：おたまじゃくし | 作成日時：2017年3月24日 13時
