ちょっと小っ恥ずかしい話を聞いてくれ ページ29
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「兄さんの婚約者ってどれ？」
ダンボールの上に無造作に積み上げられた幾多のアルバムをパラパラと捲り、欠伸まじりにたずねた。
兄さんは気だるそうに俺からアルバムを取り上げると「ああ、これ」と指差した。再び俺の手元にアルバムが戻る際に何枚も写真が床に落ちたけど、兄にとっては取るに足らない出来事のようだった。
「可愛い。俺タイプだよ」
「じゃあ、あげようか？」
「ぶはっ、いらないの？」
「どっちでもいいんだ」
兄さんの隣で幸せそうに微笑む彼女。可哀想になぁ、こんな男に捕まるなんてついてないな。もっと普通の男を捕まえて、普通の幸せを手に入れるべきだったよ。
「ジョンデはさぁ、結婚って一番好きな人としたい？」
「なに急に。気持ち悪いんだけど」
「僕はさ、二番目か、三番目とするべきだと思うんだ」
「どうして？」
「一番好きな人を一番嫌いになりたくないじゃない」
「……意味がわからないね」
「そうだよなぁ…そうか、お前が正しいよ」
兄さんにとって結婚は墓場で、バージンロードは絞首台への長い道のりのようだった。
そんな『可哀想な』兄さんの婚約者を見かけたのは俺がまだ大学生の頃だった。
バイトまでの道のりを重い足取りで歩いていると、歩道橋を渡ろうと杖をついたお婆さんが手荷物片手にヨレヨレとたたらを踏むようにして階段を上るのが見えた。
内心「少し歩いたら横断歩道あるだろ」と暴言を吐き連ねながら、無視をするわけにもいかず頭を掻きながらお婆さんのもとへ向かおうとすると…
少し離れたところで立ち竦む女の人が見えた。
その人は、オロオロと所在なさげにお婆さんへ視線を向けていて、見ないふりを決め込もうと携帯に視線を移して見たり。でも気になって少し地面から踵を浮かしてみたり…意を決して床に自分の荷物を置いた瞬間、何処からともなく現れたお婆さんの知り合いらしき人物が補助し始めた。
女の人は少し気まずそうに地面に放った荷物を手に取ると、携帯を弄りはじめた…しかし、気になるのかお婆さんが歩道橋を渡り終えるまで視線を投げかけていた。
お婆さんが渡り終えるのを見届けると、ホッとしたように少し笑ったのを見て、無性に胸がざわついた。
本当にしょうもない話だ。
一生『あの人』に伝わることはないのだろう。でもいつか揶揄ってやりたいって気持ちもある。
『優しさ』に惚れたんじゃなくて、『人間臭いところ』に惚れただなんて、恥ずかしくて言えやしないけど。
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さえ(プロフ) - カエルさんの言葉選びとか文章体がすごく好きです。引き込まれます。 (2017年6月3日 6時) (
レス) id: 463e3f37d7 (このIDを非表示/違反報告)
pumpkin(プロフ) - 毎日更新楽しみにしてました！綺麗事じゃ無いロマンチックな世界観がすごく好きでした！また期待してます！！！素敵な作品ありがとうございました！ (2017年4月3日 15時) (レス) id: 8f6e7b779b (このIDを非表示/違反報告)
ひなた(プロフ) - ツイッターもフォローしてます！カエルさんのツイッターでの欲望丸出し！な文章も大好きですが、しっかり練りこまれた占ツクでのお話も大好きです！カエルさんの書くジョンデがとてもかわいくて大好きです！また占ツクでもジョンデ連載ぜひしてください(*^^*) (2017年4月3日 2時) (レス) id: fd832b5a03 (このIDを非表示/違反報告)
カエル(プロフ) - つかるんさん» ありがとうございます〜！！（ ; ; ）そのお言葉を励みに更新ドシドシ頑張らせていただきます！！（ ; ; ） (2017年3月27日 9時) (レス) id: d32f1fae21 (このIDを非表示/違反報告)
カエル(プロフ) - pumpkinさん» ありがとうございます（ ; ; ）勿体無いお言葉でございます…！（ ; ; ） (2017年3月27日 9時) (レス) id: d32f1fae21 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おたまじゃくし | 作成日時：2017年3月24日 13時
