Lovely Summer！2(JW赤緑) (ページ7)

今日:20 hit、昨日:31 hit、合計:12,397 hit

2 ページ7

　
「ちゃんと大きい傘持ってきてんねんな」

　屋根のある場所を後にすると、地面に落ちる音に加えて傘が雨を弾く音が入るようになって声が少し聞き取りづらくなった。

「朝、おかんが持ってきって言うてたから。キツくなるから大きい方がいいって」
「へえ。俺のおかんそんなん言うてたかなあ」
「言うてたと思うで、多分」

　久しぶりに話すと上手く会話が続かなかった。

　一つ上の幼馴染。幼稚園と小学校が一緒だった。家も近くて、よく顔を合わせて遊んでいたのを覚えている。どんなきっかけで話すようになったのかはもう記憶にないけれど、本当によく遊んだ、ような気がする。

　中学も同じだったけど、向こうが中学生になった頃から少しずつ疎遠になっていって、気づけば母親伝手に聞いた情報以外何も知らなくなっていた。この高校に通っていると知ったのも入学してからで、かといって入学しても顔を合わせることもそれ以上の情報が入ってくることもなかった。連絡先すら知らないので、連絡を取ることさえもできない。

「しげほんまにここやったんやな」
「知らんかったん？」
「いや、知ってはいたけど見たことなかったし」
「そうやったんや。でも俺神ちゃんのこと何回か見たことあんで」
「え、ほんまに？」
「うん。背高い子とようおるやろ」
「マジで？全然気づかんかったわ」

　廊下ですれ違ったのか、はたまた購買にいたときか。先輩とすれ違いそうな場所を思い返してみても、しげの姿は全く浮かんでこなかった。

「まさか神ちゃんと高校まで一緒になるとは思わんかったなあ」
「な、まさかやわ。小学校から同じ子はおるけど幼稚園からはなかなかな」

　緩い坂を雨が流れていく動きがはっきりと見える。傘にぶつかる雨の音は一層激しさを増していて、予想通り靴の中が濡れている感覚がある。あまりにも会話は上手く続かなかった。

「……元気やった？」
「元気やったよ」
「ん、ならよかった」
「なんやねんそれ。会話下手になったんちゃう？」

　「やって！」反抗するように声を上げた。急にこちらを見たせいで、傘に乗った雨が一気に振り落とされて水がぶつかる音がした。

「神ちゃんと話すの久々やし、何話してええんかわからんのやもん」

「まあ確かに」

「ていうか神ちゃんは寂しくなかったん！？中学上がってからは見かけても声かけづらいしさ、そもそも神ちゃんは全然気づかへんし。俺わりとショックやったんやけど」