Lovely Summer！2(JW赤緑) (ページ6)

今日:16 hit、昨日:31 hit、合計:12,393 hit

恋愛事情ページ6

　
　ここへ来るまでからわかっていたことでも、いざの目の当たりにすると憂鬱になる。

　玄関のガラス扉越しに雨が振りゆく様を見つめて、はあと一つため息をついた。降り注ぐ雨音を聞き流しながら靴箱を開けて、とりだした外靴を床に落とした。

　右足の踵に爪先を引っ掛けて上靴を脱ぐと、にぎやかな声が近づいてきた。
　隣の靴箱のレーンに入っていったその集団からは「傘忘れた」だの「俺はちゃんと持ってきてんで」だの聞こえてくる。

　朝、おかんに言われた通りちゃんと大きな傘を持ってきて良かったと内心で思いながら、傘立てから傘を引き抜いてガラス扉を引いて外へと出た。一気にクリアになった雨音に思わず顔を顰めてしまう。

　扉を閉じようとしたところで、「俺だけずぶ濡れやんけ！」と一際大きな声が耳に入ってきた。ドンマイと少しだけ思って、そのまま何事もなかったかのように扉を閉める。

　傘の留め具を外して、ふるふると振り、上に向かって傘を広げる。1年前に壊してから新調して、それ以来あまり使っていなかった青色の傘。

　そこそこの強さで降る雨に、帰る頃には靴下まで濡れてしまっているだろうなとぼんやりと憂いた。

　がらがらと音を立てて隣の扉が開いたのを横目でチラリと伺う。傘を肩にかけて、2段しかない階段を降りようとしたところだった。見覚えのある横顔に、今度は顔ごと隣へ向けた。

「あ、」

　雨の中でもちゃんと届いたのか、隣の彼も反射するようにこちら顔を上げた。

「神ちゃん？」
「やっぱりしげか。何、傘忘れたん？」

　手元に何もないのを見て、さっき大声を上げたのはしげだったのかと納得した。通りで聞き覚えのある声だった。

「うん、まあな」
「入る？」
「ええの？」
「どうせ家そんな離れてへんしな」

　ほら、こっちに来いと目線をやると少しずつ近寄ってきて、「じゃあ俺が持つ」と傘をひょいと持ち上げられた。