Lovely Summer！2(JW赤緑) (ページ22)

今日:4 hit、昨日:22 hit、合計:12,403 hit

4 ページ22

　
「なんかええなって。外見以外なんにも知らんかったけど、めっちゃ気になって。電車一緒になったら嬉しくて、どの学年かな、とかどのクラスなんかなって思いながら見てた。そしたら流星とよう一緒におるんやもん。勝手にめっちゃ嫉妬した。羨ましかった」
「そうやったんや」
「俺は、電車に乗ってる時の顔しか知らんから、流星と一緒にいる時に笑ってるのとか見るとええなあ、俺も見たいなって」

　つきものがすっと落ちていくような感覚がした。自分の知らない顔を友人に向ける苦しさを、少し形は違えどしげも味わっていたのだ。ちくちくと刺してくるような、あの痛さを。

「なんや、ちょっと意外かも。しげって嫉妬しても言わんやん。ベタベタしてたら止めたりする時もあるけどさ」
「そりゃな。あんま束縛するんもあれやし。っていうか言いづらいやろ、友達に向ける顔が違うのが嫌、とかさ」
「……まあ、そうやな」
「やろ？」

　ズバリと心境を言い当ててきて、うっと言葉に詰まった。何も知らないくせに。
　でも、お互い同じなのだと思うと形容し難い安心感に包まれる。

「いまだに、照史とか濱ちゃんとおるときの神ちゃん見るとちょっと嫉妬する。俺にももうちょっと頼りがいあったらええのになって思う」
「……俺やって」
「ん？」
「俺やってそうや。のんちゃんとか淳太とかとふざけてるの見ると、俺は見れへん顔やなって」

　今度はしげが驚く番だった。顔をぱっとあげて合ったきらきらとした黒い瞳が驚きと喜びを湛えている。
　のんちゃんの隣でふざけあってる姿、流星と痴話喧嘩をする姿、淳太にイタズラを仕掛けては怒られている姿、俺の知らない子供っぽいしげが顔を出すたびに羨ましいと思ってしまう小さな器に呆れる辛さがじんわりと蘇ってくる。

「なんや、俺ら似たもの同士やん。神ちゃんも一緒なんやったら、ええか。言った甲斐あったわ」
「次からはちゃんと言ってな。言ってもええかなってときに。抱え込まんで」
「ん。神ちゃんもな」

　あいつら様様になりそうなんがちょっと嫌、としげが笑った。
　友達の座も恋人の座も全部欲しくなってしまう。全部知りつくしてしまいたくなる若さを少しずつ2人で分かち合って、これからもずっと隣にいたい。特別な人だから。