Lovely Summer！2(JW赤緑) (ページ18)

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③ ページ18

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｢座って｣
　先程より大分硬い声だった。ホームの中央に設置されたベンチに腰掛け、下から見つめられる。戸惑って座らないままでいればもう一度｢座って、｣と今度は頼み込むような雰囲気で伝えられる。そんな顔されたら、断れない。俺が座ると同時にまた手を取られて、今度こそ逃げられなくなった。

｢さっきのってなに？｣
　さっきの？質問の意味がわからずハテナを飛ばす俺に、ふう、とひとつ息を吐いて頷いた。
｢あの、俺と一緒やとかなんとか言うてたヤツ｣
　まさか聞かれているとは思っていなかった。なんだかドキドキしていたのがいけないことのように感じてしまう。つい反射でごまかそうとするけれど、やっぱり逃げられない。
｢や、あれは、なんていうか｣
　わたわたと慌てた俺を見てクスクスと小さく笑う。笑うなと睨んでみても優しい目は変わらなかった。キョロキョロと視線を動かす俺は傍から見ればだいぶ不格好だっただろう。
｢なあ、期待してええの？｣
　手を引かれ、距離が近づく。顔が赤いのは夕日のせいか、それとも。
｢俺は神ちゃんが好きなんやけど、神ちゃんは？｣

　目を泳がせて狼狽える俺の事を、しげは滑稽だと笑うだろうか。どう返すのが正解なのか分からなくて、好きが何かも分からなくて。ただ、しげの好意は素直に嬉しかった。
｢ふ、顔真っ赤やん｣
　溶けた瞳でそう笑われてしまう。真っ赤なのはわかってる、めっちゃ顔熱いもん。隠したいのに手を取られて隠せない。引っ張られて、肩口に顔を埋めたまま答えた。
｢うう、そういうの言わんとってや、｣
　頭をポンポンと撫でられる。今まで見たことのなかったしげの男らしい仕草に胸がきゅうと握られたような気がした。頭上から降ってくる声は甘くて、余計に痛みが増す。
｢かわい。なあ、顔上げて……キスしてええ？｣
　聞かないで、してくれればええのに。浮かんできたのはそんな言葉だった。この感情にはもう抗えないと知る。

　恋の定義も、しげに対する気持ちも、よくわからないけれど。一緒にいれば、だんだんわかるようになる気がしたから。

｢わからん、わからんけど……｣
おしえて、しげ
｢キスしたら、わかる、かも｣