Lovely Summer！2(JW赤緑) (ページ17)

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② ページ17

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｢神ちゃん、こっちおいで｣
　遠慮を知らない人波に揉まれ、奥へ奥へと押し込まれそうになっていたその時、しげに腕を掴まれる。いつの間にかドア横の角を勝ち取っていたしげが俺を引っ張って壁際へ押し込んだ。
｢大丈夫？｣
　乗客が続々と詰めかけ、車内は一気に満員となった。外は決して暑くないのに、ひしめく人の体温で車内温度がいくらか上がった気がした。
　揺れた衝撃で人が押し寄せて、少し息が苦しくなる。けほと咳き込めば背中をさすられ段々と苦しさは消えていった。

　各々で楽な体制を探る周りに押され、じわじわとしげが近くなる。いつの間にか背後の壁にに手をついていて、所謂壁ドンの体制になっていた。しげの体と壁で囲まれてしまう。たかだか5cm程度の差なのに、なぜだかすごく大きく見えた。ごめんと謝られたかと思えばグイッと顔が近づく。顔の横の手は肘に変わっていた。おでこがくっつきそうなほどの距離。もともとパーソナルスペースは互いに狭い方だったが、しげとこの距離になったことはなかった。普段よりよっぽど近い整った顔にドキドキしてしまって、つい心臓の辺りをキュッと握った。
　ドキドキも落ち着き改めて綺麗な顔やなとしげの顔をまじまじと見つめてしまう。見られてたと気づいたしげがふいっとそっぽを向いて、壁についた手とは反対の手で口元を覆う。顕になった耳が赤く染っていて、照れているのだとわかった。
　しげが照れるから、俺まで恥ずかしくなってきた。
心臓がバクバクと脈打って忙しない。ガタンと電車が揺れ、バランスを崩ししげの胸のあたりへ手を出してしまう。さっきの俺と同じくらい、もしくは俺よりもっと早い拍動が感じ取れて、手を離した。小さな小さな声で｢俺と一緒や……｣と無意識に声が出た。
　顔を背けたままだったしげがぐるんとこちらを見て、足下に置いてあったスクールバッグを2つと、俺の腕まで掴んで｢降ります｣と動き出す。電車を降りホームへと移る。左右を見渡しいちばん近いベンチに向かってずんずんと歩を進めた。握られた手首が少しの痛みを訴える。視線を向けるとぎゅうと掴んだしげの手の甲に血管が浮き出ていてその力の強さを表していた。

　しげの最寄りはまだまだ先やし、仮にもう着いてたとして、俺まで連れてかなくてええやんか。疲れてるからはよ帰りたいのに。文句を言ってやろうと口を開いたところでしげの手が離れる。

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