Lovely Summer！2(JW赤緑) (ページ14)

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「神ちゃん」

　恐る恐る顔をあげると見たことのない顔をしたしげがこちらを見下ろしている。苦しそうな表情は俺のせいなのかもしれないと思うと胸がキュッと痛んだ。

「怖い？」
「……怖いんかな」

　それすらもわからないから困ってる。でも多分きっと、そうなのかも。

　何も思っていなかった昔から何もかも変わってしまいそうな気がすることが、なのか、何も思っていなかった同性相手を好きになってしまいそうな戸惑いなのかはわからないけど。

「しげは俺のこと好き？」
「好きやで、大好き。」
「俺も好きかも、しげのこと」

　真っ直ぐな視線に合わせるようにして顔を覗く。心なしかうるうるしているように見える瞳に引き寄せられて立ち上がるとギュッと抱きしめられた。

「かも、って。まだ好きじゃないん？」
「かもはかもや。でも多分、ちゃんと好きになるから」
「ん、待ってる」

　おずおずと彼の背中に手を回すと、力がグッと強くなった。肩に顎を乗せてそっと目を閉じる。まだまだ細いけど、ずっと頼もしくなった身体が愛おしかった。

「声震えてるやん。泣いてる？」
「泣いてへん、けどそれくらいのことやねん。やっと手に入った。
　神ちゃんは最近かもしらんけど、俺はずっと好きやったから」

　ストレートに口にされた言葉がじんわりと胸に広がる。こんなに愛されていたことが照れくさくて、それ以上に嬉しいと素直に思えたのは紛れもなくしげのおかげだ。

「……なんか、間抜けやな」
「急やな」

　しばらくそうして抱き合って、いつまでもこうしていられると思ったところで、より一層ぎゅっと力を込められてから解放されてしまった。視界に入ってきたカレーのお皿に現実に引き戻されたらしい。
　「なんか慣れへんな」恥ずかしそうに笑うしげがお皿を下げにキッチンへと入っていく。カウンターに置かれていた台布巾で机の上を拭いてみたりする。

　しげと付き合う。
　内心で口にすると不思議な気持ちになった。あったかいようなくすぐったいような。ともかく照れくさい。

　もう既に、好きかもどころじゃないかもしれない。
　自身心変わりの速さを痛感させられる。だって、もうシンクの前で真面目に皿を洗うしげのことが可愛くて仕方が無い。ああ言った手前、もうちょっとお試し期間でいるつもりだけど、いつまで持つか分からない。
　カウンターに肘をついて下を向くしげの姿を眺める。どうしようもなく愛おしい姿だった。