短編 (ページ23)

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神ちゃん不足。
ありえへん、今日も神ちゃんは小瀧とで、俺は淳太と。──淳太とのペア撮影多ない？いい加減神ちゃんとがええんやけど！
チラッと神ちゃんを伺うと、俺にはしない上目遣いをして、うんうん頷きながら小瀧の話を聞いてる。
ちょっとだけ小瀧を羨ましく思いながら、いつもの様に淳太の方へ足を向けた。
｢じゅーんたくんっ！｣
｢げ｣
｢あーそーぼ！｣
｢嫌や｣
｢なんでや！｣
｢いらんちょっかいかけて来るからや｣
｢……お願い、ちょっとだけ｣
様子の違う俺に気づいたのか、形の整った眉をぴくと震わせ、しゃあないとでも言うようにため息をつく。
｢今日って、｣
｢これで終わり。いつもんとこでええの？｣
まだほとんどなにも言ってないのに、聞きたいことをわかって、先回りで答えてくれる。それどころか、2歩、3歩先を進む淳太は、聡明で頼りになるが、やはりせっかちと言って良いだろう。まあそこらへんは、相方がバランスを取ってくれているのを知っているから、俺はノータッチ。全部丸投げします。

時は変わって仕事終わり。取材を受けた後の楽屋には、神ちゃんと俺しかいなかった。
｢あれ、淳太は？｣
｢一旦家帰るって。なんかあったんかな？｣
おそらくゲーム中だっただろうに、スマホから目を離し目を合わせて答えてくれる神ちゃん。それだけで俺の心臓はきゅっ、と、握られたような苦しさを持つ。
｢ほーん、んじゃ先行こ｣と平然を装って答えると、少しの沈黙。言いにくそうに口元をむずむず動かしたと思えば、開く唇。
｢……あの、練習、もうやめへん？｣
｢、え｣
思ってもみなかった言葉に、脳が働いてないことがわかった。だって、嫌そうやなかったやん。断らんかったやん。彼を責めるようなことしか浮かばない俺とは反対に、つらつらと続ける。

｢あーんももう大丈夫そうやし、しげには淳太がいるやろ？淳太やって、しげが俺と練習、してるって知ったら、嫌やって思うやん。秘密のままにしておくから、な？｣

彼から吐き出される言葉は右から左へと流れていって、理解できなかった。脳みそが処理落ちしたような気がした。