愛に交えて君想ふ。 (ページ10)

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愛情ページ10

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「こんっのくそ錦！！！」

「はぁっ？んだよクソ董香！！！」

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言い合う2人の足元で董香ちゃんの落としたお皿を片付ける

サクッとガラスの破片で軽く切ってしまった指ですらすぐ治ってしまう体は便利だけど人間味のないその体に落胆する

西陽の指す店内に、鈴の音が響くと

彼女が来た時に必ずする"良い匂い"が店内に入り込む

「いらっしゃいませ」

つい嬉しくて頬が緩む

『こんにちは』

そういう彼女はいつも下ろしている髪を珍しく結っていて

"これもまたいいな"

なんて1人で考える

いつも通りカウンターに座る彼女はトーカちゃんを見ると軽く会釈する

あぁそうか、彼女が来る日はいつもトーカちゃんのシフトが入っていない日で、今日初めて顔を合わせるのか

『...むむむ』

小さく顔を歪める彼女が可愛くてつい笑ってしまう

きっと僕に着いていた香りがトーカちゃんだったことに気づいたところなのだろう

あぁなんて、可愛い人なんだろう

『けん君の淹れた珈琲を1杯』

いつもの注文ももう慣れたもの

僕が毎日珈琲を淹れる練習をし始めたのは、この人に美味しい珈琲を飲んでもらいたいと思ってからだ

『上手く、なったね。淹れるの...』

ブラックが苦手な彼女は、ぼくの珈琲を飲む時1杯目を必ずブラックで飲む

「ありがとうございます。でも、どうしてAさんはブラック苦手なのに1杯目をブラックで飲むんですか？」

率直な疑問だった

『前に、けん君の淹れる珈琲は優しい味がするって言ったこと覚えてる？』

もちろん覚えている。

「はい、覚えてます。」

その言葉が僕にとってどんなに嬉しかったか彼女は知らないだろうなぁ、、

『苦いだけの珈琲じゃないんだよね、けん君の珈琲は』

『やさしさぜ〜んぶ詰め込みました！っていう、愛情の籠った味がするから君の淹れた1杯目はブラックなんだよ。』

何故か嬉しそうに笑顔でそう言う彼女と
その言葉に頬が赤らむのが自分でわかった

バレたと思った

僕が彼女のためだけに一生懸命淹れているのがバレてしまっている。

「そ、そんなことないですよ〜、、はは、は、」

思わず引き攣った笑顔が浮かぶ

誤魔化してもきっと彼女には意味が無い

だってずっと嬉しそうに微笑む彼女には全部全部バレてしまっているから