第二十五話 ページ27
no side
『ｯｯ……ｯ』
声を出すまいと口を固く閉ざす。しかしどうしても声を出てしまうようでAの口から嗚咽が漏れる。
『(泣きたくないのに)』
流れ落ちていく涙を伸ばした袖で乱雑に拭う。
その場にいた誰もが動揺して動けない中、一人だけがAの腕をそっと掴む。
「あ〜そんな雑に拭わんの、跡になるやろ？」
『っちーの』
チーノは自身の袖を優しく押し当てる。
「ごしごししたらアカンよ？」
『ん……』
保健室行こか、と言ってAの腕を引っ張る。
「ちょ、チーノくん…！！」
「取り敢えず誤解は解けましたし、今回はお開きでいいでしょう？美月先輩たちもまだ言いたいことがあるのは分かるんですけど、Aはキャパ越してるんですよ。また今度にしてくれません？」
有無を言わさないような口調でにこり、と胡散臭い笑みを浮かべるチーノ。
「何も喋らんコネシマさんとシャオさん以外もちゃんと反省してくださいね」
じゃあ、と言って生徒会室の扉を開けようと手を伸ばす………前に勢いよく開かれた扉に思わずチーノは手を引っ込める。
「よ〜っす元気してっか？」
意気揚々と現れた人物にチーノは顔を引き攣らせた。
「何…？なんか空気重いんだけど……」
春だと言うのに季節外れの赤のマフラーに青色のニット帽を被った男。自分の想像とは違った重苦しい雰囲気に怪訝な顔をする。
「はぁ……らっだぁさんタイミング悪いですね」
「え、なになに？てかその子誰？」
『ぉわ…』
「あ''ー！！！あとで説明するんで！！一回外出ましょう！てか近い！！」
もう片方の手でらっだぁの腕を掴んで去っていく。
残されたメンバーは開かれたままの扉を見つめる、誰かがぽつりと呟いた。
「悪くなかってんな、あの子」
その言葉は彼らの心に重たく響いた。
「説明不足だった。巻き込むなんて考えてなかった」
「証拠もないのに決めつけたらあかんかった」
「大勢で責めて怖がらせた」
「何も言わなかったし何もしなかった」
「頬叩いた、痛かったはずやのに諦めた表情で俺を見とった…
あの子は、何もしてへんかったのに」
言葉を紡ぐ度に罪悪感が心を蝕む。
泣いて叫んで訴えたAの主張は掻き消された。震える体で、声で涙を流していた彼女の必死な姿を思い出す。
「もっと、やり方があったはずなのにな」
--------
保健室にて
「恋は盲目ってよく言いますからね」
あれらは恋じゃないけど、誰にも聞こえない声でチーノは呟いた。
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もも - 面白い！！ (4月27日 12時) (
レス) id: 090ee67cb9 (このIDを非表示/違反報告)
アホです - 面白いです! (4月27日 12時) (レス) @page36 id: fc78fe5922 (このIDを非表示/違反報告)
霙(プロフ) - しずさん» コメントありがとうございます、励みになります。ゆっくりにはなりますが更新していきますので次回のお話も楽しんでいただけると嬉しいです！ (9月3日 17時) (レス) id: c3d88da4d8 (このIDを非表示/違反報告)
しず - 初コメ失礼いたします！。最新のお話読まさせていただきました！。はらはらしながら読まさせていただきました！最近は何回もお話を読み返させていただいてます！お忙しい中大変だと思うのですが、更新頑張ってください！。いつでもどこでも待ち構えさせていただきます！ (8月20日 5時) (レス) id: 36de129ac6 (このIDを非表示/違反報告)
霙(プロフ) - あまねさん» コメントありがとうございます。そう言っていただけてとても嬉しいです！ゆっくりの更新にはなりますが次回のお話も楽しんでいただけると嬉しいです。 (8月5日 23時) (レス) id: c3d88da4d8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：霙 | 作成日時：2023年1月7日 0時
