猫 (ページ28)

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『海斗 : 話したいことある』

彼からそんなメッセージが届いたのは昨日の夜

『私も』と打った文字を消して

『わかった』なんて返信をした。

部屋にチャイムが鳴り響いてドアを開けると
就職でもするのだろうかと思うくらいに
髪を黒くした海斗が立っていた。

いつものようにずかずかと部屋に入る海斗の背中を
追うように私も部屋に入った。

「どうしたの、その髪」

倉「ん？ああこれ似合うっしょ」

似合ってるなんて素直になりたくなくて

「海斗じゃないみたい」

なんて言ってしまう

「、それで話って」

倉「あの、さ俺」

海斗が息を整える音が聞こえた

その次にくる言葉なんてわかっていて
思わず私から口をひらいてしまった。

「もう終わりにしよ」

倉「え？」

「やっぱりこういう関係良くない」

倉「え、ちょっと待って話が見えないんだけど」

「だから、もう会うのやめよう私たち」

海斗の大きな瞳が私を捕らえた

「海斗もそれ言いに来たんでしょ」

最近私の家に来る頻度が下がっていたのも
お酒の好みがビールから焼酎なんて大人っぽいものに変わっていたのもたまに海斗から香る香水が、
柑橘系からバニラに変わったのだって気づいていた。

倉「、わかった。」

消えそうな声でそれだけ言うと
海斗は首元からネックレスを外して
テーブルの上においた。

そのまま玄関へと向かった海斗の背中を見ながら
涙が溢れてくるのを堪える

出て行ったかどうかもわからないくらい
小さい音でドアが閉まった。

もう、終わったんだ。

自分から終わらせたくせに可哀想だなんて
悲しいだなんて思う自分がどこまでも嫌いだった

あのネックレスにそっと手をかける

「ごめんね、海斗」

海斗といれば自分まで特別になったような気がして

海斗に縋って頼ってのめり込んで

いつか私も海斗みたいに輝けるなんて

こんなの夢物語だったんだ。

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