恋は盲目《QK》

ハッピーエンド fkr ページ40

「もうダメなのかもしれないです」



一緒に飲みに行きませんか、と誘ってきたAちゃんと個室の居酒屋に来て1時間ほど。

仕事の話をしてひと段落着いた頃。「最近はどう？」という俺の問いかけに対して寂しそうな顔をしてそう言った。


「…今日俺を飲みに誘ったのも、なんかそういうことなのかなって思った」

「はは、鋭いですね、さすが福良さん」


彼女は残り少しだったアルコールをぐいっと一気に飲み干して、はぁぁ、と大きめにため息を吐いた。


「伊沢と、なんかあった？」


俯いていた彼女がゆっくりと顔を上げる。

アルコールで紅くなった顔。すでにその瞳は濡れている。


Aちゃんはお手伝いやらいろいろとQuizKnockを支えてくれている1人だ。

伊沢と付き合って一年以上。最初こそ伊沢がAちゃんにべったりくっついていたり、逆も然り。まあ名物バカップルのような感じの2人であったが、最近はそもそも忙しい伊沢がオフィスに来ることも減ったせいかめっきりそういう姿を見かけていなかった。


「拓司は私に興味なくなった気がするんです」


テレビでもひっぱりだこの伊沢と、会うことすらままならない。
そんな寂しい気持ちが彼女を不安にさせているのだろう。こんな悲しそうな顔は久しぶりに見た気がする。


「あんまり会えなくて、会っても最近喧嘩ばっかりで。

連絡しても忙しいから全然返信来ないことが多くて、これ以上私からはしない方がいいのかなって。

…それに、最近飲みが増えてるんです」



今まできっと、誰にもこの相談をしたことがなかったのだろう。
Aちゃんは、氷だけになったグラスをクルクル回しながらつらつらと言葉を並べる



「Aちゃん、伊沢のことどう思う？」

「どうって…」

「伊沢のこと、好き？」



Aちゃんは驚いた顔をして時間を置いてから、「はい」と答える

ごめんね、少しだけ分かってたけど、君に意地悪をした。


伊沢のことを話すAちゃんは、本当に伊沢への愛に溢れていた。まるで、目の前にいる俺の事はこれっぽっちも考えていないように。

でもね、君にとってのハッピーエンドは「伊沢と幸せになること」なんだろうけれど、俺にとってはそれがバッドエンドなんだ。



「…まあ、2人でしっかり話し合いの場を設けてみなよ。言いづらかったら俺から言うし」

「そうですね…がんばります！」

2→←3

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す