満員電車と事件 -ini ページ20
満員電車は嫌いだ。でもそれに乗らないとオフィスに行けないので仕方がない。
僕はイヤホンをして周りの音を全てシャットアウトしながら、次の記事の内容だとか、今日の撮影のことだとか。なるべく満員電車から意識を逸らしながら電車に揺られていた。
ふと、女性と目が合った。
すぐに目を逸らそうとしたけど、さすがに見覚えのある人…どころか、会社の上司に当たる人だったので無視をする訳にもいかず、とりあえず軽く会釈をする
目が合った女性、Aさんは僕の2つ上で、QuizKnockライター。入りたての時から色んなことを教えてくれた優しい先輩だ。
少し手を振った彼女はすぐに僕から視線を外す。
視線をスマホに戻そうとしたのに、予想外のものが視界に入ってしまって目を背けることが出来なかった。
唇を固く結んでなにかに耐えるような顔。もう一度戻ってきた視線。今にも涙が零れ落ちそうな瞳。
『た、す、け、て』
口がゆっくり動いたと思ったら明らかにそう動いたものだから、一瞬で理解した。
Aさんの後ろを見ればスーツ姿の中年の男が立っており、時折Aさんの顔を見ている。
涼しい顔をしているがその人で間違いない、Aさが置かれている状況も推理通りだろう。
「〜、前の方との間隔を〜……」
電車が着いた途端、満員の中どうにか移動してAさんの元に急いだ
乾「ほら、降りますよ」
「え、あっ、…!!」
さっと手をしまって何事も無かったかのように振る舞う男。
この男を引っ張り出して駅員さんに連れ出そうとも思ったが、今はAさんを助ける方が先だ。それに満員電車はそんな猶予を与えてくれず、僕とAさんはそのままホームに押し出された。
乾「Aさん…大丈夫ですか」
「乾くん……ごめんね、ありがとう」
緊張が解けたのか、Aさんの頬に涙が伝う。
すぐにその涙を拭いて僕の方に笑いかけてきた
それがあまりにも美しくて、僕は時が止まったかと思った
乾「ちょっと飲み物買ってきますから。ここ座ってて下さい。」
自動販売機でココアを買う。
たしかAさんは甘いものが好きで、よく福良さんや須貝さんにココアを貰っていたことを思い出したのだ
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あす(プロフ) - はじめまして。izwさんの飴と鞭と腐れ縁の続きが気になります(*´ω`*) (2021年6月9日 1時) (レス) id: 14b7e1c0b8 (このIDを非表示/違反報告)
美糖(プロフ) - ちひろさん» リクエストありがとうございます!tmrさん書いたことなかったのでハッピーエンドで書いてみます! (2021年2月10日 18時) (レス) id: 236b53465e (このIDを非表示/違反報告)
ちひろ - はじめましていつも読ませていただいてます。リクエストなんですがtmrさんでお願いできますか?できればhappy endでお願いします。これからも頑張ってください。 (2021年2月10日 0時) (レス) id: 192c096d22 (このIDを非表示/違反報告)
美糖(プロフ) - 桃花鳥さん» ありがとうございます!!歪んだ話が書きたくなりまして…笑 これからもよろしくお願いします! (2021年2月2日 23時) (レス) id: 236b53465e (このIDを非表示/違反報告)
桃花鳥 - 『ハッピーエンド』…めちゃめちゃ好きです…(; ;* 基本、本当のハッピーエンドしか好きじゃないんですが…新しい扉を開いた感覚です…笑 強引に幸せな方向に持っていってやるっていう感じが好きです(?)これからも楽しみにしております(´`* (2021年2月1日 2時) (レス) id: 43e2bb2fc1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:美糖 | 作成日時:2020年12月14日 0時