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それは遡ること数時間前。
この世界に来て、早くも2週間が経った。
冬休みも明け、私は毎日中学に通っている。
学校では懐かしの数学やら、生物やらの勉強をしつつ、家に帰れば神社の手伝い。
我ながら充実した日々を送っていたと思うのだ。
そんな中突然父に言われた言葉で、私は充実とは真逆の位置にいたことを知る。
「A、最近宿儺様にご挨拶はしたのか?」
「・・・は、?」
「前までは毎日のように宿儺様とお話していたと話した内容まで楽しそうに私に伝えてくれていたのに、ココ最近は全くその話を聞かないからね」
何かあったのかい?なんて緑茶片手に柔らかい笑みを浮かべるこの世界の我が父。
ちょっと待て。
宿儺様?どういうことだ。この世界の私は毎日宿儺様に話しかけていたのか?
父の口ぶりからして私と宿儺様は会話が成り立っていた、のか?
いやそれ以前にこの家でなんで宿儺様の名前が出るんだ。宿儺様ってあれだろ、両面宿儺様だろ?
私の知る宿儺様は彼しかいない。
だがしかし、彼の名なんていくら大昔からある結家であっても出てくるわけがない。というか縁が無さすぎるだろう。
私がじっ、と考え込んでいたら、父は不思議そうにこちらを見る。
「A?どうかしたのかい?」
「・・・あ、ああ。えっと最近は少し疲れていたんだ。
ほ、ほら!宿儺様とお話するのにこちらが疲れた顔をしているなんて失礼でしょ?
だから最近はお話が出来ていないんだ」
「ああ、そうだったのか。
冬休みが終わったばかりだからまだ学校に慣れていないのかな?
しっかり休んで、また宿儺様とお話するんだよ」
私はお前と宿儺様との話が好きだからね、なんて朗らかに笑う父。
それに軽く返事をして、部屋を後にする。
仮に私が宿儺様とお話させて頂いていたとしよう。
今私が普通に生きているところを見ると私は彼にまだ気にいられている方なのでは、?
今はただの封印された指先であっても呪いとしての力は十ニ分にあるはずだ。
気に入らないからと言って首チョンパするのなんて簡単なのだろう。
だがそれをしないということは
ふかふかのお布団に包まれながら、宿儺様のことを考える。
たった一言でこんなにも悩むことになるとは思いもしなかった。
まあ、いい。明日の朝また日記を確認してみよう。何か手がかりがあるかもしれない。
そう思い、目を瞑る。
刹那ぞわりと背筋を駆け巡る嫌な感覚。
「おい、小娘」
そして、話は戻る。
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作者名:moe | 作成日時:2021年1月31日 4時