か す み ば し ら。

勇気と幸せとはにかみと ページ40

「A、」

満月の晩、縁側で。

後ろから声をかけられて振り向くと、無一郎が首をかしげて「ちょっといい？」と聞いてきた。

「どうしたの？」
「ん…。ちょっと上手くいくかわかんないけど」
「？？？」

そのまま、私の左側に座る。
無一郎は隊服のポケットを探った。

「……ん、あった……」
「無一郎？」

無一郎がはにかむ。め、珍しい…
そのまま私の左手をすくい、薬指に何かつけた。

「……？」

よく見てみると…指輪。

「わ、綺麗……いいの、こんな高そうなの」
「ん。だって渡す用の指輪だもん」

へら、と緩く微笑む。
月明かりを反射して、淡く輝いていた。
綺麗で、思わずじっと見つめる。

「……あのさ」
「うん？」
「結婚してくれない？」
「うん……うん？ん！？」

今度はとんでもない発言をした無一郎を見る。

「……それ、いいの？ダメなの？」
「け、結婚って言っても…！嬉しいけどね！嬉しい…でもまだ年齢的に結婚できな…」
「……もう、」

困ったように笑い、きゅっと抱き締めてくる。
暖かい…

「ずっと一緒にいたいだけ。正式に結婚出来なくてもね。それぐらい君が好き」

それじゃダメ？と可愛く問いかけてくる。
……うん。

「結婚したい……」

妙に照れ臭かった。





「じゃあ、今日から一緒に住むってことでいいよね」
「え、あ、そ、そっか…そうなるか」
「何照れてんの、泊まるだけなら何度もあったでしょ」

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