か す み ば し ら。

噂話を確かめたい・弐 ページ11

…何故俺が選ばれる。



『一日目の偵察係、伊黒さんがいいと思います！木登れますし』

胡蝶め…木なんて鬼殺隊なら誰でも登れて当然だろう。何故俺を選ぶ。理解できない。そもそもお前は冨岡に押し付けると思っていた…

そして何故都合よくちょうどいい木があるんだ。これなら結構奥まで見えるし身を隠しやすい…

暇なのか、蛇が首をうねっては戻って、うろうろしている。
うーん、何も進展がない。

時透が此方に背を向けていた、長い間。そして立ち上がって玄関の方へ走る。
……暫くして、戻った。Aと一緒だ。

これまでにないくらい笑顔。さすがに会話は聞き取れないか……

「……！」

…すごく、すごく……恋仲っぽい…ことをしている…
Aが時透に抱きついた。それに応じて時透も抱き締める。笑顔で。

もうこの時点で甘すぎて喉と胸と頭が痛くなるがもっと甘くなる。糖分過剰摂取だ。

時透が、くい、とAの顔を上げさせる。そのまま…口付けた。

「…………」

気になる。気になるとは言ったが！ここまで甘いとは分からんだろう！！
頭を抱える。甘すぎて甘すぎて。

俺がこんな事になっている間も、何回も何回も。余裕げな時透と余裕の無いAの対照性がすごい。

慈しむような笑みを向け、頬を撫で、また＿＿＿

木から落ちた。







「どうでしたか、伊黒さん」
「……あますぎる……」
「なんてことだ！伊黒がすごくぐったりしている！大丈夫か！」
「(ぐったりしてる伊黒さん…！いつもと違うけど素敵だわ！)」

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