影に咲け、悲哀の花【短編集】 (ページ3)

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クロッカスページ3

「あのっ……あの、好きです」

夕暮れ。私は後輩。頬を赤らめて、もじもじして、やっと言えた。
今日は大切な日。髪もいつもより気合いを入れて手入れし、少しだけ化粧して、香水もつけた。

今の私は美人な、私じゃない私。

それなりに自信はある。

目の前の先輩はきょとんとした目で見ている。

「先輩の優しいところとか、かっこよくて素直なところとか、好きです。だから、私と」
「あのさ」

降ってきたのは冷たい声。

うつ向いていた顔をあげる。
＿＿＿嘲笑。

「俺、お前のこと何とも思ったことねーんだわ。」
「え、」
「あと、なんなの？素直だとか、優しいだとか。俺の何を知ってんのかね」
「え、あっ」

その瞳に湛えていたのは＿＿＿

「あ、体だけの関係ならいいよ？ちょーどほしかったんだよねー。ま、お前の快楽は考えねーけどな」

がらがら。心の崩壊。
気がつくと、私は平手打ちをしていた。

先輩の頬が赤く染まる。もみじいろ。

「っさいってい、」
「最低な俺を好きになったのは誰？」
「嫌い。もう嫌いです。話しかけないで下さい」

どうしようもないくらいの憎しみ。
青春なんて甘いもの考えていた私が馬鹿だった。

「もっと相手のことを知ってから好きになったほうがいいよ～？愛架ちゃん」

……私の名前を呼ぶな。

ぶっ壊れたハートを直すのに必死で、それは言えなかったのだけれど。