ハンサムな君に (ページ38)

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電車を降りて裏道を歩く

車も通ることなく、私達以外誰も通る気配がない

国道からも少し離れているから車の音も
あんまり聞こえなくて

街灯に照らされて私たちの影がふたつ
アスファルトの道に浮かび上がる

＂2人きり＂なんて言葉が
よく似合うシチュエーション

それを意識し始めた瞬間とたんに恥ずかしくなって

何か話題はないかあたりをキョロキョロと見回す

横目で海斗くんを盗み見ても
キャップをかぶっていて表情はよく読み取れず

退屈してないかな、なんて少しだけ心配になったり

だけどこの沈黙もどこか心地よくて

家に着かなければいいのになんて考えてしまう

するとどこからか自転車が後ろから
猛スピード走ってくる

「Aちゃんこっち、」

自転車が私の横を通り過ぎるのと同時に
海斗くんに手首を掴まれ引き寄せられる

突然距離が近くなり、
思ったより腕がしっかりしていて

物理的に感じる男性らしさに

今度こそ心臓の音が聞こえてしまわないか
冷静でいられなくなってしまう

自転車も通り過ぎ離れようとしたら
そのまま手を繋がれる

「……夜は危ないからね」

そう言ってまた歩き始める海斗くんの顔は

夜道でよく見えないと思っているのか分からないけど

街灯に照らされしっかりと赤くなっているのが見えた

言わずもがな、

私も負けないくらい顔が赤い自信がある

どうしよう、

確かに今いるのは＂1人の宮近海斗＂だけど

＂アイドル＂であるのには間違いなくて。

こんな気持ち抱いちゃいけないはずなのに

いつのまにか、すごくすごく

私は海斗くんのことが好きになっていたみたいだ