センパイ。 (ページ27)

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「……あの、」

「ん？」

「ゼミの最初の方、
うるさかったですよね。すいません」

「え？……あぁ。松倉がね！」

「中川先輩とは付き合ってないので！ほんとに！」

中川先輩に申し訳ないと分かっていながらも
これだけは誤解されたくなくて
つい大きい声を出してしまった

2人しかいないゼミ室には大きすぎる声だったらしく

私の叫びが虚しく響き渡る

「……うん、大丈夫。分かってるよ。
それよりも、」

そう言って宮近先輩は一瞬迷ったような顔をした後、
続けてこう言った

「高校のとき好きだった人って
今でも好きだったりするの？」

あまり感情が読み取れない目に
思わずたじろぎそうになる

……なんで。

なんでそんなことを宮近先輩が気にするのか

自惚れて期待して
本当のことを今にでもいってしまいそうになる

「それは……
それは、内緒です。」

"内緒＂だなんて都合のいい言葉で誤魔化す

「内緒って言われたら気になるけど、
海人たち買い終わったぽいから合流するわ。
ごめんね残ってくれてありがと」

「いえいえ！
宮近先輩はその…いますか？好きな人」

「んー内緒！じゃね」

いたずらっぽく余裕そうに口元をあげるように
笑うと颯爽と帰っていく

「気になるじゃん……」

やられたと思いつつ、
他に言いようがあったのかなと自問自答しながら
鍵を閉め学務に返すために足を運んだ