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だから、女子に勘違いされるんだっていうのに 宮は聞く耳を持ちやしない。

さっきまで鼻歌交じりで足取りも軽く歩いていたくせに、今ではすっかり不機嫌だ。


「ちょっと、宮」

「喧し」


ずっとこんな調子である。


「友達やし」

「はいはい」


まあ、こうなったら落ち着くまではどうしようもないので 放っておくしかないのだが。



教室に戻ると 二種類の視線を向けられた。


ひとつは羨望、もうひとつは嫉妬。

恋は盲目 なんてよく言ったものだと思う。


ふたつの感情は紙一重であり、ぎりぎりの均衡を保って存在しているのだから。


「ねえ、Aちゃん」

「ん、どーした?」

「あのさ……侑くんの好きな人って、どんなタイプかな」


聞いてもらえる? と尋ねるその子。


ほら、また。

不安そうな顔をしながら 見え隠れするのは恋心か妬みか。


「うん、いいよ」


そんな彼女を安心させるように、口角を上げる。


「ありがとう」

「いやいや、こんなことくらいなら いつでもするよ」


もう一度 ありがとう、と頭を下げて帰っていった彼女は どことなく輝いて見えた。


シンデレラもどきから シンデレラへ、か。



「さっきの、なんやって?」


いつの間にか隣にいた宮が 耳元で息を吐く。


「ちょ、やめてよ」


身を(よじ)れば、音も立てずに彼が離れた。

つくづく心臓に悪いと思う。


「好きなタイプ知りたいんだって」

「ほお、誰の?」

「アンタのでしょ」


彼は 好きなタイプなあ、と考え込む素振りを見せ、数秒後に 笑みを深めて言った。


「俺のこと好いてくれる人」

「それは建前の話だよね」

「あ、バレた?」


ホンマに好きなんは 俺だけを見ててくれる人なんやけどなあ。


そうぼやく宮に、首を傾げる。


「それってあんまり変わんなくない?」

「俺の気持ち的には 変わるんやけど」

「へえ」


私の反応が気に食わなかったのか「もうちょい反応示せや!」と眉を寄せた。



……宮だけを見てる人、か。


そんなの彼の手に収まりきらないほど沢山いるのに、どうしてあんなこと言うのだろう。



私には彼がわからなかった。



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夢花 ゆめいろ星(スター)の夢花(仮) - なんか知らないけどこういう系の作品見ると大抵作者がモノクロ様w今回も「おぉ!モノクロ様!!」なったwww嬉しす。こういう書き方神秘的で好きなんだよなぁ。勿論長編のやつも大好きだけど。こういうのたまに見ると楽しいw (2018年4月25日 11時) (レス) id: 1ce7d18474 (このIDを非表示/違反報告)
カレー@ナッポレオンが相棒(プロフ) - 初コメ失礼します....!ずっと前から思ってたんですけど、モノクロさんの小説の書き方が凄く凄く好きです…()今回も最高でした!お体に気をつけて、これからも頑張ってください(*´-`) (2018年4月22日 22時) (レス) id: 7750765a54 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:モノクロ | 作成日時:2018年4月22日 19時

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