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カランと鳴ったベルは、お洒落なバーによく合っている。


知らない場所に連れてこられてソワソワしている私とは正反対に、彼は落ち着き払って私をエスコートした。

似合わないと一言言ってやれればいいのに、私の方は緊張してガチガチになってそれどころじゃない。
英太くんらしくないよ、まったく。

「アルコールには強い方?」
「うーん、まあまあ。なに、酔い潰してどうにかするの?」
「んなわけねえだろ、ただちょっと」

言い淀んだ彼の顔はちょっぴり曇っている。
お酒の力を借りることに罪悪感を持っているのか、それとも。
私がその先を探すより前に、彼の頼んだカクテルが置かれた。

「デプス・ボム。対潜水艦爆雷の意味を持つカクテルで、まあ、アルコール度数は高い」
「へえ」

カクテルに詳しくないからよくわからないが、彼は私にでもわかるよう、噛み砕いて教えてくれる。

ブランデーとアップル・ブランデーを30ml、グレナデン・シロップをティースプーン1杯、レモン・ジュースを1滴。

それをシェイクしてカクテル・グラスに注いだものがデプス・ボムなんだとか。


カタカナばかりで飲み込めていない私を笑って、アルコール度数は高いけど香りがいいんだ、と言った。

「まあ、無理して飲む必要はないけどな」
「プロポーズに四つ葉のクローバーでも差し出す気?」
「そんな小さいプロポーズで喜んでくれるならいくらでも」
「へんなの、昔の英太くんじゃないのに、やっぱり英太くんは英太くんだ」
「なんだよ、それ」

カクテル言葉は口説き文句だとつけ加えた彼は、その夜の赤さに目を細める。


これを飲めば一歩先へ踏み出せるのだろうか。
大人の赤という言葉がぴったりな液体に、私も目を向けた。

その度数の高さから、対潜水艦の爆弾を意味する名前がつけられたと言われているカクテル。

「今からお前を口説くから」

口説き文句なんて嘘っぱちだと鼻で笑った私に、彼は眉を寄せた。

「かぁいくねえ」

いいじゃないか、それでも。
なあなあにしてうやむやにして、ふらふらと要らないまわり道をして。

紆余曲折あって、でもやっぱり私達はハッピーセットなんだから。


英太くんの言葉に応える代わりに、デプス・ボムに口をつける。

ふわりと香ったブランデーの華やかさとアップル・ブランデーのアンニュイさが絶妙で、私はあの夏から離れられないことを実感した。


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つくね(プロフ) - コメント失礼致します!モノクロさんの書かれる小説が大好きなので、今回モノクロさんのオシャレな文体で推しの瀬見さんが読めて本当に嬉しいです…!これからも素敵な小説を期待しております、執筆頑張って下さい! (2018年11月5日 22時) (レス) id: 51dd67607c (このIDを非表示/違反報告)
モノクロ(プロフ) - 黒波さん» コメントありがとうございます!チッスチッス!この後のことは物語の二人のみぞ知る、みたいな感じにしたかった……。黒波氏の性癖に合うような小説を書けてよかったです!本当にありがとう!! (2018年10月27日 18時) (レス) id: 2266d5aa5e (このIDを非表示/違反報告)
黒波(プロフ) - コメント失礼します!チッス!今回もハチャメチャにものちゃんワールドが展開されていて性癖ドストライクでした。これからを連想させるような書き方をするものさんの作品が好きです。 (2018年10月27日 17時) (レス) id: 8d17606e29 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:モノクロ | 作者ホームページ:   
作成日時:2018年10月27日 12時

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