02 ページ3
.
じりじりと肌を焼いていく太陽光に目を細めて空を見上げる。
真っ黒なアスファルトは音を上げて、ゆらゆらと陽炎が揺れていた。
八月、“バレーボール部 祝インハイ出場”なんていう横断幕にまた彼が遠くなったことを悟る。
選手欄に彼の名前を見つけて、なんとも言えない気持ちになった。
瀬見英太、せみえいた。
頭の中で勝手に分解されてブツブツと切られていく平仮名達がぐるぐると回る。
それが知らない言葉のようにすら思えてしまって、慌てて頭を振った。
茹だるような暑さに額の汗を拭う。
インターハイが終わってしまえば彼らも受験期に入るのだろうか、と物思いに耽っていたところで声をかけられた。
校門から出た私に英太くんが近づいてくる。
ジジッ、桜の木で喧しい声を上げていたアブラゼミが1匹、真っ青な空へと吸い込まれていった。
そんなに慌ててどうしたの、と彼らしくもない行動に苦笑してハンカチを差し出す。布切れに目も向けず、微妙な顔をして彼は口を開いた。
「なあ、俺」
思わず、彼の口を私の手で塞ぐ。
溢れそうになる何かに蓋をして、知らないふりをする。
彼には目の前のことに一生懸命になってほしかった。私が見ていた瀬見英太という男はそういう奴だったから。
けれど、私はその言葉の続きを許してしまった。
帰宅部女子と運動部男子の腕力の違いなんて今更知りたくもなかったのに、それを嫌というほど思い知らされる。
掴まれた腕は彼から離されて、行く先のなくなった私の手は重力に従ってだらりと下がった。
「アンタが好きだよ」
ぽたり、頬を伝っていった汗がワイシャツに落ちる。
彼の言葉を否定したがる私の頭は上手く状況を把握してくれない。
夏の喧騒をやけに遠く感じて、「アイスでも食べようか」なんて場違いな台詞を吐いた。
彼は、笑ってはくれなかった。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 23人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
つくね(プロフ) - コメント失礼致します！モノクロさんの書かれる小説が大好きなので、今回モノクロさんのオシャレな文体で推しの瀬見さんが読めて本当に嬉しいです…！これからも素敵な小説を期待しております、執筆頑張って下さい！ (2018年11月5日 22時) (
レス) id: 51dd67607c (このIDを非表示/違反報告)
モノクロ(プロフ) - 黒波さん» コメントありがとうございます！チッスチッス！この後のことは物語の二人のみぞ知る、みたいな感じにしたかった……。黒波氏の性癖に合うような小説を書けてよかったです！本当にありがとう！！ (2018年10月27日 18時) (レス) id: 2266d5aa5e (このIDを非表示/違反報告)
黒波(プロフ) - コメント失礼します！チッス！今回もハチャメチャにものちゃんワールドが展開されていて性癖ドストライクでした。これからを連想させるような書き方をするものさんの作品が好きです。 (2018年10月27日 17時) (レス) id: 8d17606e29 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：モノクロ | 作者ホームページ：
作成日時：2018年10月27日 12時
