ライラックの花束を (ページ20)

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松倉side

「当たり前だろ。俺、お前の幼馴染なんだから。」

わざわざ言う必要のない言葉を自ら並べる

無意識に自分に言い聞かせるように。

「そうだね、
海斗はいつも真っ直ぐに受け取ってくれるから

私ものびのびと自分がピアノに乗せたい想いを込めて
弾くことができる」

＂ほんと、ありがとね＂と言いながら笑うAは

やっぱり可愛いなあなんて思ってしまう。

いつもとは違いドレスを身に纏っていることもあり

可愛いだけじゃなくてすごく綺麗で。

夏らしい水色のドレスに
白いクチナシのブーケが綺麗に映えていた

もう何年もAの演奏会を見に行ってるなかで

年々綺麗になっていくAを見て

思わず抱きしめたい衝動に駆られるけど

あまりにも近くなりすぎた、
壊れたら後戻りできないような
＂幼馴染＂という関係性が

いつも、今日もまた
俺の中でストッパーを働かせる

「俺も音楽好きだからさ、刺激もらってる
…じゃ、俺先帰るわ！ほんとおつかれ」

誤魔化すように笑いながら伸ばしかけた腕を下げ

ホールを後にし夏の空を見上げながら家に帰った