◯ ページ30
『今日は雨やなあ。』
「うん。」
寝室の窓からは雨が降る音が聞こえる。
梅雨だしこの時期だから珍しくはないんだけど。
『織姫と彦星さん、会えてないんかなぁ…』
…あぁ、そういう事か。
康二の言葉で七夕の昔話を思い出した。
一年に一度、七夕の晴れた日にだけ逢うことが許される二人。
天の川を隔てて離れて暮らす夫婦が、橋をかけて逢いに行くことができる特別な日…だっけ。
『せっかく会えるはずやったのに、逢引すらも叶わんねんて。
…2人にとっては、大好きな想い人に会うことが1番の願い事やのにな。』
「…なんかちょっと可哀想だね。
この雨も、2人の涙だったりして。」
昼間は土砂降りだった雨も、今は静かに、でも確かに降っている。
雨は嫌いじゃないけどこんな日くらいは晴れててあげて欲しかったな、なんて。
『…。』
黙りこくった康二を不思議に思ってその顔を覗き込むと、いつの間にか潤んだ目には涙が溢れていて。
「えっ、康二！？」
『…うぅ…、』
「なんで泣いてんの…」
『なんか…織姫さんと彦星さんのこと考えたら怖くなってきて…めめと一年に一回しか会えへん世界なんか嫌やぁっ、』
そう言って泣きじゃくる康二。
あぁもう、ほんとに…
「…ふふっ、」
『…なんで笑うん〜…！』
「いや感情移入しすぎしょ、可愛いなって(笑)」
『だって…！』
「俺らは年に一回どころか毎日仕事でもプライベートでも会ってんじゃん。」
『でも…いつ会えんくなるかわからんやん…
…宇宙人に連れてかれたりとか…。』
「ぶはっ(笑)なんだそれ(笑)」
『おれ、めめと会えんくなったらもうどうしたらいいか分からんもんっ、』
ほんとに、可愛いことばっか言ってのけちゃって…
「康二とは離れる気なんか一生ないんだけど？」
耳元で甘く囁くと、分かりやすく反応する可愛い恋人。
頬の涙を拭って、ゆっくりと触れるだけのキスをする。
『んっ…。』
「俺だったら、雨が降っても槍が降っても天の川なんか飛び越えて康二くんに会いに行くけどな。」
『…ふふ。どうやって会いに来てくれるん？」
「気合と根性でしょ。」
『ははっ、…もう、めめ大好きっ。』
首に手を回した康二が耳元でありがとう、と囁かれるから。
それを受け止めてもう一度、今度は深くとろけるようなキスを。
いつになくロマンチックな寝室に、外の雨音は染み入るように響いていた。
．
Case9 End .
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 993人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SnowMan」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆきんこ(プロフ) - あきさん» あきさん！コメントありがとうございます！！そう思ってもらえる作品が作れてほんまに嬉しいです( ; _ ; )！！1番嬉しい褒め言葉が聞けて喜んでます！！これからも期待に応えれるように頑張ります！！素敵なコメントありがとうございました！！ (2020年7月13日 0時) (
レス) id: 9366bbf9ec (このIDを非表示/違反報告)
あき(プロフ) - 今回も素敵な作品ありがとうございましあ(;o;)何度も読み返してしまうくらい作者様の作品がだいすきです！これからも楽しみにしております(^-^) (2020年7月12日 17時) (レス) id: 1c418bb080 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきんこ(プロフ) - ゆきちゃんさん» いつもありがとうございます(*^_^*)リンクできててましたかね…！私的に凄いパワーワードやなって思ったので書いちゃいました（；＿；）ほんとに幸あれですね（ ; ; ）平和に幸せになってほしい。（ ; ; ） (2020年6月25日 1時) (レス) id: 9366bbf9ec (このIDを非表示/違反報告)
ゆきちゃん(プロフ) - 実際のライブとリンクしながら読みました…泣きそうううう。こーじに幸あれと願いますほんと…！ (2020年6月22日 12時) (レス) id: 2e7657af2c (このIDを非表示/違反報告)
ゆきんこ(プロフ) - ゆきちゃんさん» いつもありがとうございます(*´∀｀)こっそり始めてました（笑）更新頑張ります！ありがとうございます！ (2020年5月30日 16時) (レス) id: a4db884c5e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：雪 .
| 作成日時：2020年5月15日 23時
