35話 ページ37
朝、私を呼びに来た先生と一緒に仮眠室を出る。
棗の怪我は、全て治してくれたらしい。
精神的な疲れもあったんだろうって言ってたから、
今は先生の部屋でぐっすり眠っている棗を見て、
起こすのはやめることにした。
本当は、棗の隣で寝ている流架は起こして教室に行かせようと思ってたんだけど、
昨日の流架の真っ赤な目を思い出してそれもやめた。
医｢行くの？｣
元々あった隈が更に濃くなっている先生が、
痛み止めの薬を引き出しから取り出しながら私に聞いてくる。
、、分かってるくせに。
貴『うん、行くよ。
棗の怪我、治してくれてありがとう。
先生も寝てね？隈、凄いよ。』
差し出してくれた薬を受け取りながらそう言えば、
乱暴に頭を撫でられた。
医｢全く、、。
あの子みたいな外傷は治してあげれるけど、
医者としてあんたみたいな重症患者を
痛み止めの薬だけで送り出さなきゃいけないなんて。
人の心配ばっかしてないで、少しは自分に優しくなりなよ。
どうせ、寝れなかったんでしょ。｣
そう言いながら私にも癒しのアリスを使ってくれる先生に、
やっぱり頭が上がらないと思った。
少し時間が経つと体がだいぶ楽になって、
『先生ありがとう、もういいよ。』と言えば、
呆れたようにため息を吐かれる。
部屋を出る前に渡された水で薬を飲んでいると、
先生がﾎﾞﾌｯとソファーに座りながら話しかけてきた。
医｢この子達の休みの連絡は私がしておくから、
あんたは気にしなくていいよ。
それから、
体調のことバレたくないならここに来る回数増やしなさい。
この子達にもし何か聞かれても、
言わないでおいてあげるから。｣
先生の優しさに救われてばっかりだな、と思いながら、
罰則面の中で満面の笑みになってしまう。
貴『私の担当医が先生で良かったっ！
ありがと、なるべく早く来るね。』
そう言って部屋の外に出る私の背中を見ながら、
先生が｢なるべくって、、、あのバカ。｣
と呟いていたのは私は知らない。
病院を出て本部に向かおうとしていると、
｢A。｣と声をかけられる。
貴『あー、ごめん来るの遅かった？
ちょっと病院寄ってて。』
そう声がした方に体を向ければ、
眉間に皺を寄せた零が立っていた。
零｢随分、あの黒ネコを大切にしているな。｣
ｽｯと罰則面を外してくれる零に、
貴『どうかな？
でもその表情、今から私が言うこと予想ついてそうだね。』
と笑顔を向けると、空気が少し冷たくなった。
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作者名：紅97 | 作成日時：2021年1月20日 17時
