願い事 1 [学園アリス] (ページ21)

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19話ページ21

任務は成功だった。

監視カメラに映らないように移動するのは
ちょっとダルかったけれど、
日向棗君はなんの問題も無く着いてきてくれたし、
警備員にも出くわさなかった。

それにこの子動き良すぎ。

その身軽さに、黒猫という名前がピッタリだと思った。

きっと戦闘も得意なんだろうな、
喧嘩でもしてたのかな？とぼんやり考える。

45階の社長室に着くと、
私は目を瞑りこの部屋の空間を遮断する。

部屋1つなら範囲はそこまで広くないし、
データをコピーする時間くらいなら余裕でもたせられる。

もう私の自由な空間みたいなもんだから、
普通にドアノブを回して部屋に入り、
一際大きな机の上にのるパソコンを起動させた。

無事コピーし終わりUSBを抜き取ると、
きちんと電源を落としてからガラス張りの部屋を見る。

空は真っ暗だけれど、星なんて1つも見えはしなかった。

帰りも同じようにして帰るのはちょっと面倒だな、
と思い、隣にいる彼に声をかける。

貴『今から空間交換で車の中戻るけど、
瞬間移動みたいな感じだから安心して？

あーでも、私がアリス使う時声かけたりしないでね。
コントロールミスったら体潰れちゃうかも。』

ｻﾗｯと言い過ぎたのか凄い見られてる気がするけど、
この子は大丈夫か、と思い日向棗君の右手を握った。

万が一があったら大変だしね、触れてた方が安全。
と思いながら、目を瞑り集中する。

空間交換で体だけ送るのはもう何度もやってきたけど、
たまに失敗して地面も一緒に送られちゃったり、
何度か零に怒られた事がある。

けどもうそんな心配も無いくらいコントロールは安定してるし、
薬も飲んだから調子は悪くない。

ふ～っと息をゆるく吐いて、
ﾊﾟｯと空気が変わったのを感じ取り目を開けば、
そこはもう車の中だった。

成功成功、ちょっと緊張した。

貴『ペルソナ、これ。』

左手を離し、右ポケットに入っていたUSBを渡す。

私達が急に車内に現れた事に運転手さんは吃驚してたけど、
零からはリアクションはなかった。

まあ割といつも通りだもんね。
体調が悪くない限りは、
練習がてら私はいつも空間交換して帰ってるし。

学園に着くと、寝静まっている敷地内はとても不気味だ。
アリスを持っている子達は皆個性が強いから
日中はとても煩いし、余計そう思うのかな。

初等部の寮の前でそう考えながら、
零が私達の罰則面を外してくれるのを、車の外で待っていた。

肌寒い風が、2人の間を通っていく。