キスがしたい ページ1
ar.side
『魅惑的な唇』とはよく言ったもので。
目の前でご飯を食べる伊野ちゃんの唇は形も良くまるでグロスを塗ったようにぷるんとしていて美味しそう…
なんてバカな事を考えながらぼんやりと眺めていた。
-----------
in.side
今日は大ちゃんと2人でやってる雑誌のお仕事の日。
午前中からの撮影も順調に進み、只今お昼休憩中。俺はお腹が減ったので用意してもらった肉料理の入ったお弁当を食べていて、大ちゃんは俺の真向かいに座っていつものように携帯を弄っている。
「ねえ、大ちゃんお腹すかないの？」
「んー、？まだそんなにぃ？」
「そう言って撮影始まったら『お腹すいたなあって』ダダこねるよ、絶対」
「こねねえよ、俺そんな子供じゃねえもん」
携帯に釘付けだった大ちゃんは俺の言葉に顔を上げると少し睨むようにして俺を見つめてくる。
「はいはい、ほぉら、だいちゅきなハンバーグでちゅよ〜♡」
何か言いたげに口を尖らせている大ちゃんの口元へ弁当に入っていたハンバーグをひとくちサイズに切り分け持っていくと、少し戸惑った後それを素直にパクリと食べる。
「ン、美味しぃ」
「でしょ、こっちのおかずも美味しいよ」
「……ちょっと食べようかな」
「ほらぁ、やっぱりお腹すいてんじゃん」
「いのちゃん、もうひと口」
「は？」
「いのちゃん、もうひと口」
そう言うと、大ちゃんは雛鳥のように口をあけた。その小さな口から、形のいい赤い舌がちらりと覗く。その姿に、いけない感情が俺の中で生まれる。
あぁ、キスがしてぇ。
そのよく熟れた舌にしゃぶりつきたい。
もう一度ハンバーグを切り分けると、お行儀よく待つ大ちゃんの口の中へ放り込む。
肉汁でてらてらとした唇で肉を頬張り、美味そうにそれを飲み込む動きに、気づけば「今日泊まりにおいでよ。」と誘っていた。
きっと明日も早い大ちゃんは断る。そんな俺の考えとは裏腹に「……いいよ」と微かに返す大ちゃんの耳は瞬く間に赤く染まっていく。
これは大ちゃんも期待してるってことでいいよね？
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 79人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ttyuuu | 作成日時：2022年3月6日 1時
