衰弱4 ページ19
辰哉side
まだそう遠くに行っていない、なんならまだ病院内にいるはず。
途中で看護師さんに「走らないでください！」と怒られ、「ごめんなさい！」と言いつつも、足は止まらなかった。
康二、どこにいる？
兄貴、気づいてやれてなかったな、遅くなってごめん。
不器用で、ごめん。
康二は、屋上にいた。
もう冬の季節で、外はこんなにも寒いのに、その屋上の真ん中で康二はへたりこんでいた。
辰哉「こーじ。」
俺の声に反応はしない。
俺は近くまで行って、隣にしゃがむ。
辰哉「こーじ、話してごらん。」
できるだけ優しい口調で、康二に言う。
顔を覗き込むと、今にも泣きそうな顔をしていた。
康二「俺、……ずっと怖い。蓮が、もうどこかに消えちゃう気がして。」
辰哉「……うん。」
康二「最初は俺も高校生になったし、蓮を励ましたくて、もっと強くなろうと思って甘えちゃダメって自分に言い聞かせた。」
康二「俺の楽しい話聞いてくれたら元気でるかなとか、色々考えてた。でもな、やっぱ病気ってそう言うのお構いなしやん。」
辰哉「………そうだね。」
康二「俺がどんなに頑張って蓮を勇気づけたって、蓮を蝕む病気には俺の力ではどうにもできない。それがもどかしい。」
康二の瞳からはらはらと涙が溢れる。
康二「蓮、どんどん弱くなってってる。俺、もうそれを見てるのが辛い。兄弟なのに、情けないな…」
ぼたぼたと溢れた涙は、またたくまにコンクリートの床にシミを作る。
康二「だからバイトって口実つけて、会わないようにしちゃってた。逃げてるのは俺なんだ。蓮は、ずっと逃げたくても逃げられない病気と戦ってるのにな……」
嗚咽をこぼしながら、肩を震わせて泣く康二の背中を優しくさすってやる。
俺の胸の中に飛び込んできて、きゅっと俺のコートを掴む康二は、やっぱりまだまだ子供みたい。
辰哉「じゃあ、蓮のとこ戻ろう？蓮、ずっと康二のこと待ってたんだぞ。」
康二「うん……行く。」
外の寒さとは対照的に、心が温まっていくのを感じた。
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白林檎(プロフ) - ﾂﾅﾏﾖさん» こちらこそ、最後までお読みいただきありがとうございました！無事完走できました！ (2022年7月30日 9時) (
レス) id: c971cdea3b (このIDを非表示/違反報告)
ﾂﾅﾏﾖ(プロフ) - 完結おめでとうございます！素敵なお話を本当にありがとうございました！ (2022年7月30日 7時) (レス) id: 733eb035f8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：白林檎 | 作成日時：2022年5月14日 17時
