偏愛 (ページ5)

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「はいみんな席に着け〜HR始めるぞ」

先生のその一言で自分の席に戻る生徒たち。
私たちも自分の席に着く。

クラス替えをした直後の席順は、当たり前だけど出席番号順。
笠原A、田中樹、松村北斗なので席はバラバラ。

樹は1番後ろの席。
昼寝し放題〜とか言ってるけど、案外後ろの席が1番目立つんだよ、と心の中で毒づいた。

北斗は廊下側の最前列。
当たり前だけど遠いな…
休み時間になったら遊びに行こう。

「早速だが、この2年3組に転校生が来ることになった。入ってこーい」

みんなが前の扉に注目する。
扉が開き、転校生が入ってきた。

先生が教卓まで転校生を誘導する。
黒板にお世辞にも上手とは言えない大きな字で、転校生の名前を書き終えた。

「はい、じゃあ自己紹介して」

そう言われ、転校生はおもむろに口を開いた。

「…京本大我です。よろしくお願いします」

黒縁メガネに、目にかかるくらい伸びた前髪。
挨拶もその二言で済ませ、俯いている。

無表情な彼の姿を見た周りの生徒からは、小さな落胆の声が聞こえる。

「女の子じゃねーのかよ」

「なんか暗そうだね」

「関わりにくいタイプじゃない？」

…なんかこの雰囲気、嫌だな。
見た目だけでその人の性格まで決めつけて。

その様子を傍観している私も、ただの偽善者なんだろうけど。

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