かき消すAside ページ35
貪るように求めたんだ。
頭、瞼、鼻、耳、唇、そして舌を絡める。
A「ん//」
ピンク色に頬を染めた君の目がトロンとして俺を見つめる。
A「はぁ//」
息をするので精一杯な君のすぐにでも抜けてしまいそうな腰を腕で支えた。
PLLLLLL
すると、着信音が鳴り響き理性を取り戻す。
「ご//ごめん//」
PLLLLLL
A「電話大丈夫ですか?」
なり続ける電話に気を使ったAさんが俺に言った。
PLLLLLL
「あ、」
応答する前に着信音が鳴りやむと、玄関先で沈黙が走った。
A「お、おかね//受け取ってくださいね。」
沈黙を破ったのはAさんだった。
「う//うん。じゃあ、また撮影でね。」
俺はそう言って、アパートを出た。
本当は帰る前にAさんにちゃんと言うべきだったのに。
“Aさんがすき”だって。
俺は今二股をしていることになるのだろうか。
だとしたら、知らずに不倫をしていたAさんをまた傷つけてしまうかもしれない。
「サムッ」
タクシーを待っているとメッセージが入ったことに気付く。
MIKI[会いたい]
着信の応答がなかったため、美紀がメッセージを送ったのだ。
「俺は美紀の彼氏なのに…。」
Aさんもすきになってしまっていた。
でも、美紀と別れるつもりはないんだ。
俺は美紀に“幸せにする”って約束したんだから。
その日は、美紀を一晩中抱いた。
さっきまでのAさんの感触をかき消すように。
Aさんの想いを封印するかのように。
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作者名：もも | 作成日時：2019年2月11日 21時
