【twst】賽は投げられた (ページ3)

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「お前、本当に人間か？」

意識が明瞭になってから一番にかけられた言葉は随分素っ頓狂なものだった。人間か？人間に決まってる。逆にそれ以外何だというんだ。

訝しげな目で質問を投げかけてきた黒い物体を睨むと、くすりと鼻で笑われた。鼻につく奴だな。

「俺に飲み込まれたのにちゃんと意識を持ってる。困惑した表情すら見せない…奇妙な生き物だな」

飲み込まれた、とは一体どういう意味なのだろうか。不思議に思い小首を傾げると、黒い物体はゆらゆらと揺れながら言葉を重ねた。

「…言葉通りそのままの意味だ。飲み込んだ(・・・・・)んだよ、お前を」

飲み込んだ…食べた、体に取り込まれたということが？きっと言葉通りなら、この黒い物体に自分は食されたということになるのだろう。にわか信じがたい話だ。

黒い物体は耳障りな羽音のような音を発しながら俺の方に近付いてきた。

「今お前は俺と一体化している。お前は俺と共鳴してるんだ、こんなのは幾千年生きて来て初めてのことだ…実に興味深い…！」

簡単な声を漏らし、細く黒い腕のようなものが俺の頬に触れた。その酷く冷たい感触に、全身に鳥肌が立つような不快な感覚が走った。

何だかすごく気持ちが悪い…一体ここはどこなのだろう、俺は今一体何を見せられているんだ？この黒い物体は？

「お前は一体何なんだ…？！」

「お、やっと口を開いたな。てっきり話せもしない愚図を取り込んでしまったのかと思ったよ。

俺は“暴食”のベルゼブブだ」

ベルゼブブ。何度も何度も見た名前だ。七つの大罪の“暴食”の罪に値する悪魔、別名ハエの王。確か傲慢の罪であるルシファーに続く凶悪な悪魔だったはずだ。

俺が奇妙な文字を見たのはベルゼブブのページだ。こいつの言うことが真実なら、俺は悪魔に…ベルゼブブに取り込まれたということだ。

「にしてもお前、今時悪魔崇拝なんて変わってるよなァ…他の悪魔たちもお前のこと、随分気に入ってたみたいだし」

黒い物体…ベルゼブブは俺の目の前まで一気に接近し、俺の耳元でそう低く囁いた。ねっとりとしたその囁きに背筋がぞくぞくとした。今まで感じたことのない、えもいえぬ感覚だ。

「美味そうだしカワイイ顔だし、俺を扱うには申し分ない器だな…コレを“最後の晩餐”として見ても良いかもな」

独り言のようにベルゼブブがそう呟くと、俺の視界は反転した。今度は酷く禍々しい真っ黒い光に俺の体は呑まれていった。