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「A!もっとオレ様を撫でるんだゾ〜!」
「ぐ、グリム…それ痛いから…!」
ようやく転入初日の長い授業を終え、放課後となった。
俺はほんのちょっとの好奇心と出来心でユウの肩にちょこんと乗っているグリムを撫でてみたところ、どうやら妙に懐かれてしまったらしい。
撫でろ撫でろと催促するグリムは俺の顔にぐりぐりと迫ってくる。これは地味に痛いし困る。
ユウはあわあわとグリムを掴み取ろうとするもなかなか離れない。エースとデュースはこのヘンテコな絵面に離れたところで笑っている。…何なんだ、この状況は。
「グリム…!俺、放課後はちょっとした用があるんだ。その用が終わったらグリムの気が済むまで撫でるよ、だから今は勘弁してくれないか…?j
「ぶなっ!?本当かA?絶対だゾ!?」
「うんうん、絶対撫でるから」
やんわりと迫るグリムを押し除け、俺はユウとエースとデュースの3人に顔を向けた。
3人とも「放課後の用って?」と言いたげな表情をしている。だがここでフロイドたちとの件がバレるわけにはいかない。
エース…はともかくユウとデュースは優しいから、きっとこの件を知られたらついて行くと言い出すだろう。俺としては友人たちを巻き込む方が厄介だ。
「…少し寄るところがあるんだ。長くは掛からないだろうし、すぐに寮に戻るからね」
言い聞かせるように早々と吐き捨て、俺は颯爽と教室を出た。
つい何時間か前に走ってきた道…モストロラウンジまでの道のりはしっかり覚えている。あの人たちのことだろうから、俺がすっぽかせば必ず迎えにくるはず。そうなったら一巻の終わりだ。
出来るだけ早く行き穏便に済まそう。繕うことも我慢することも俺には得意中の得意だ。
『“穏便に”ねぇ…俺がお前の中にいる限り、
あんな奴一瞬で殺せるのにな』
頭の中で1日ぶりにベルゼブブの低い声が響いた。酷く嫌な響き方で頭がガンガンと痛む。
…殺してどうするんだっての。後の祭りだろうが。それに、俺は別にあの人たちを殺したいほど恨んでるわけでもない。恐怖はあるが殺意や憎悪なんて以ての外だ。
『ハッ…まぁ精々頑張れよ。俺に泣きながら懇願するならちゃんと協力してやるからさァ』
文脈からして、彼の言う協力とはすなわち殺戮だ。誰がそんなことのために泣きながら懇願するんだ、馬鹿野郎。
俺は心の中で悪魔に毒を吐き、モストロラウンジへの足を早めた。
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星猫 - 知ってるアニメは何ですか? (2021年3月3日 18時) (レス) id: e8084d140d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぽ。 | 作成日時:2021年3月2日 22時