【twst】賽は投げられた (ページ12)

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「はぁ…」

ため息を吐きながら中庭へ続く通路を小走りで進んでいると、ふいに鼻元に衝撃が走った。

硬いものに正面から当たってしまったらしく、数秒遅れてずきずきと鈍く痛みだした。当たった衝撃で少しよろけてしまい、転ぶすんでのところでなんとかバランスを保った。

鼻を抑えながら当たった物体に目を向けると、そこには獣のような耳と尻尾が生えた大柄な男子生徒が立ちはだかっていた。

「チッ、痛ぇな…どこ見て歩いてるんだよ！

…ってお前…まさかあの噂の転入生か？」

男子生徒は舌打ちして悪態をついたと思いきや、謝罪の言葉を言う暇も与えず胸ぐらを強引に掴んできた。

急な出来事に混乱しつつも胸ぐらを掴まれた苦しさに顔を顰めてしまった。

噂の転入生…良い噂がないのは知ってるけど、まさかぶつかっただけでこんなことになるなんて…！

「お前、初っ端からオンボロ寮の半分をぶち壊したんだろ？デカイ面して調子乗りやがって…」

次の瞬間、男子生徒は薄ら笑いを浮かべながら腕を思い切り振り上げた。

もしかしてこれ、殴られるやつでは…！？
数秒遅れて頭が覚醒し、俺はせめてもの抵抗にと片脚を無鉄砲に動かした。

ダメ元でやった行動だが、重力に反して体は羽根のように軽く俊敏に動き、俺の片脚はしっかり男子生徒の体を捉えていた。

「クッ…！」

軽い蹴りではあったが弱らせるには充分だったらしく、俺はその大きな腕から無事逃れることができた。

苦しげに呻く男子生徒を尻目に、振り上げていないもう一方の足で地面を蹴って滑らかに着地した。

何だ、これ。まるでアクション映画みたいだ。
俺運動は苦手なはずなのに…絶対こんなのはおかしい。一体何が起こってるんだ…？！

「お、お前っ…やりやがったな！！」

更に逆上した男子生徒は再びこちらに拳を振り上げて勢い良く向かってきた。

そろそろ本格的にヤバいのでは？なんて思いつつ、俺はまた軽く相手の拳を往なし、背中をちょこんと脚で蹴ってやった。

これくらいならバランスを崩すだけだしきっと転ぶ程度で済むはずだ。よし、お互い無傷で一番平和的な解決。

予想外の出来事だったが、俺の普段の運動神経に反してやたらと俊敏に動く体に感謝だ。

…こんなのはかなり不自然だが、こんな異世界に飛ばされていちいち気に留めていたら生きていけない気がする。おそらくまたベルゼブブの仕業だろう。たぶん。